3代目の三橋敏弘さんと4代目の優策さん
三橋さん自慢の店内に入ってみて驚いた。そして、いっぺんに楽しくなった。最高で80人が同時に飲んだことがあるという広い立ち飲みスペースは、船のキャビンであり、クルージングバーになっているのだ。
「うちのお客さん、ほとんどがサラリーマンの方なんですが、その6割までが造船関係ですし、3割がそのグループ企業の電機関係。店の休みもそちらに合わせているほど、お世話になっているんですよ。だからこそ、ピア(桟橋)に接岸している客船のキャビンで立ち飲みしているような雰囲気を味わえるようにしたんです。それを気に入ってくれたお客さんが、結婚式の披露宴にここを使ってくれたこともあるんです」(三橋さん)
広いキャビンは入口側に、人々の煩悩の数を意識したという高さ108センチの大きなU字型カウンターがあり、奥は混み具合にあわせて10台まで折りたたみ式の丸テーブルが広げられるオープンスペースになっている。
「カウンターはぼくのようなひとり客とかふたり連れの常連客用と理解してます。奥はグループで来た人たちが、好きな場所に丸テーブルを広げてますね。こっちもそっちも楽しそうで、花園みたいです」(造船系40代)「高いカウンターがいい。立ち飲みカウンターと神戸の文化度は比例するって聞いたことがありますけど、納得できますよ」(電機系50代)
文化度の高い花園をより活気づけているのは、もちろん三橋さん。すでに5代目(3歳)をもうけ、ますます張り切る4代目の優策さんも追いつけないほどの元気ぶり。
U字型カウンターの客からこんな声が届いた。「客の一人ひとりに、腹の底心の底から歓待の声をかけてくれる。これがここに来る理由のひとつ。しんどくてもこれで生き返れるんですよ」(50代)
「大将のこの声と明るさ。集まる人たちのやさしさと品のよさ。それでうちの奥さんの公認の店なんです。自分はここの客としては少数派の異業種なんですが、みんな仲良くしてくれます」(40代、運送業)