ビジネス

Jリート 遅れて景気回復の恩恵受けるオフィス系に妙味あり

 今年に入って著しい上昇を見せたJ-REIT(不動産投資信託、以下、Jリート)市場だが、4月以降軟調な展開となっている。しかし、日本経済の回復の恩恵がJリート相場に反映されるはこれからだとJリートに詳しいアイビー総研の関大介氏は指摘する。以下、関氏の解説である。

 * * *
 2013年後半もJ-REIT(不動産投資信託。以下、Jリート)市場は、上げ基調を維持できると見ている。東証REIT指数は8月中旬現在、1300ポイント台で推移しているが、年末にかけて1500ポイント付近まで上昇してもおかしくない。プラス・アルファの要素が出てくれば、1600ポイント以上を狙える局面と考えている。

 まず、Jリート相場が大幅に上昇した昨秋から今春までの相場の動きを振り返りたい。昨夏以降、東証REIT指数はじわじわと上げてきていたが、昨年11月に野田佳彦前首相が衆議院解散を表明したころから、安倍新政権が誕生した年末にかけて大きく上昇していった。

 さらに、強烈な上げをみせたのが、今年1月~3月だ。アベノミクスへの期待が高まる中、年明け1月4日に約1141ポイントだった東証REIT指数は、2月27日にはリーマン・ショック以降、初の1300ポイント台に乗り、3月27日には1700.91ポイントに達した。

 この著しい上昇相場の要因は、「黒田祭り」の一言に尽きる。3月上旬から日銀総裁候補として黒田東彦氏が衆院議院や参院議院の各運営委員会で所信を述べるたび、Jリートの買い入れ枠増加への期待から、東証REIT指数が上に大きく動いた。同21日の総裁就任後も勢いは止まらず、わずか数日間で1700ポイントまで急騰したのである。昨年末までの上昇は、実需を伴う上げだったが、年初からの上昇は、「祭り」相場の様相を呈していた。

 しかし、4月に入ってから、日銀が発表したJリートの買い入れ枠の水準が、白川方明前総裁の時と実質的にほとんど変わらないことが判明する。それまでJリート市場の「黒田祭り」に参加していた投資家が、「どうやら本当の祭りではなかった」と気が付き、利益確定の売りも出て、東証REIT指数は一時、1200ポイント台まで下落した。

 また、黒田総裁の「異次元」の金融緩和によって円安に振れ、国内外の投資マネーが大挙して向かったのは、日本の株式市場だった。Jリート市場が先に黒田祭りに参加はしていたが、「祭りの本体は株式市場だった」というのが今年前半の動きである。

 このような状況で、なぜ、Jリート市場がこれから上昇するといえるのか。そのカギを握るのが、Jリートの主力とされるオフィス系銘柄だ。

 Jリートは取得している物件内容により、オフィスビルに投資する「オフィス特化型」(オフィス系)、マンションなど賃貸住宅に投資する「住居系特化型」(住居系)、ショッピングモールなどに投資する「商業施設特化型」(商業系)に大きく分類される。

 この他、ホテルに投資する「ホテル特化型」(ホテル系)、倉庫を貸して賃料をもらう「物流施設特化型」(物流系)、3つ以上の用途を組み合わせる「総合型」などもあり、8月中旬現在、41銘柄が上場している。

 この中で今、特に投資妙味があるのが、出遅れ感のあるオフィス系と考える。今後、オフィス系のファンダメンタルズ(基礎的条件)が回復する可能性が高まっており、価格も上昇する「よい上げ相場」が期待されるからだ。

 実は、景気回復の恩恵を最後に受けるのが、オフィスの賃貸市場である。景気に対する遅行指標ともよくいわれるが、景気回復で企業収益が上がり、人員も増やしてスペースが足りなくなる、あるいは、より優れた立地やグレードの高いオフィスビルに移りたいという余裕が企業に出てくる。これによって、オフィス賃貸市況は回復してくるのだ。そのタイムラグの目安は約1年、実際にオフィス系の分配金が回復するまでは約2年かかるとされる。

 現在、オフィス系は分配金ベースで見ると、昨秋よりも減配傾向にある銘柄のほうが多い。しかし、これから景気が回復してくれば、2年後に分配金が大きく増加する可能性もあり、期待できるのだ。

 冒頭で述べた、Jリート相場の上昇を後押しする「プラス・アルファの要素」とは、株式市場まで到来したアベノミクス効果の次の波が近づいてくることである。企業収益が改善されると、現在のように株式市場が先に回復するのは当然だろう。ただ、その次に恩恵を受ける市場はどこかを考えると、遅行性を持つオフィス系が浮上する。

※マネーポスト2013年秋号

関連記事

トピックス

モデル・Nikiと山本由伸投手(Instagram/共同通信社)
「港区女子がいつの間にか…」Nikiが親密だった“別のタレント” ドジャース・山本由伸の隣に立つ「テラハ美女」の華麗なる元カレ遍歴
NEWSポストセブン
米大リーグ、ワールドシリーズ2連覇を達成したドジャースの優勝パレードに参加した大谷翔平と真美子さん(共同通信社)
《真美子さんが“旧型スマホ2台持ち”で参加》大谷翔平が見せた妻との“パレード密着スマイル”、「家族とのささやかな幸せ」を支える“確固たる庶民感覚”
NEWSポストセブン
高校時代の安福容疑者と、かつて警察が公開した似顔絵
《事件後の安福久美子容疑者の素顔…隣人が証言》「ちょっと不思議な家族だった」「『娘さん綺麗ですね』と羨ましそうに…」犯行を隠し続けた“普通の生活”にあった不可解な点
デート動画が話題になったドジャース・山本由伸とモデルの丹波仁希(TikTokより)
《熱愛説のモデル・Nikiは「日本に全然帰ってこない…」》山本由伸が購入していた“31億円の広すぎる豪邸”、「私はニッキー!」インスタでは「海外での水着姿」を度々披露
NEWSポストセブン
優勝パレードには真美子さんも参加(時事通信フォト/共同通信社)
《頬を寄せ合い密着ツーショット》大谷翔平と真美子さんの“公開イチャイチャ”に「癒やされるわ~」ときめくファン、スキンシップで「意味がわからない」と驚かせた過去も
NEWSポストセブン
生きた状態の男性にガソリンをかけて火をつけ殺害したアンソニー・ボイド(写真/支援者提供)
《生きている男性に火をつけ殺害》“人道的な”窒素吸入マスクで死刑執行も「激しく喘ぐような呼吸が15分続き…」、アメリカでは「現代のリンチ」と批判の声【米アラバマ州】
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン