国内

避難経験者が福島に帰れぬ理由に地元からの風当たりの強さも

被災地の現状

東京オリンピック開催に沸く中、素直に喜べない人々もいる。その代表格が原発被害に直面している福島の人々だ。「国のトップが堂々と嘘をついているなんてあきれるばかりです」。そんな悲痛な声は、東京と福島の温度差を浮き彫りにした感があるが、まだまだ知られていない問題が福島にはある。

「一度地元から離れて避難してしまうと、故郷に戻りづらくなってしまうんです。当初は避難したことに対して一定の理解を示してくれたのですが、段々と時が経つにつれ避難者に対して、地元の人からの風当たりも強くなっていって…」

双葉八町村に程近いエリアから県外に避難したAさんは、ため息交じりにそう漏らす。“大変なときに地元にいなかった”“ふるさとのために力を合わせないで逃げた”。そんな感情がふつふつと地元民の間に膨れ上がるという。

「目立たないように夜中にこっそり地元に戻った人も少なくないです。家に明かりが点いているのを見て、あの人帰ってきたんだ、なんて噂されるみたいです。私はその話を聞いて、さらに帰りづらくなってしまって…」

Aさんの話によると、地元に戻っても以前のようなコミュニティや人付き合いを形成するのは困難で、避難地から戻ってきた出戻り組だけで集まるお茶会などもあるそうだ。戻ってきた人は戻ってきた人で固まるしかない。「絆」とは程遠い光景が、福島の各地にはあるという。とはいっても、地元に残った人たちの言い分も考えてあげなければならないだろう。 

「地元に残った我々はなんとか元の姿を取り戻そうと必死にやっている。放射能被害を恐れる気持ちは、当然、残った我々にだってあります。ですが、過敏に反応してしまう人は、内部被曝、外部被曝とも違う心内被曝とも言える状況に陥ってしまっている気がします」

飲食店を営むある地元民は、そんな複雑な地元事情を苦々しく説明してくれた。心に負った被曝量で、福島県内にも温度差がある。問題は山積状態だ。

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