【鮮魚】【自家製】【フレッシュ】──これらは『阪急阪神ホテルズ』の“偽装”メニュー騒動で問題になった言葉だ。倉敷芸術科学大学の学長で『食の安全・安心財団』理事長の唐木英明氏はこう言う。
「ホテル側は今回の問題で、景品表示法と不正競争防止法に違反する可能性があります。前者は実際よりも著しく優良・有利であると消費者に誤認される表示を禁じており、消費者庁から措置命令が下され、それに違反した場合は罰則。後者では虚偽表示を刑事処罰の対象とし、5年以下の懲役、または500万円以下の罰金。法人の場合は3億円以下の罰金となります」
阪急阪神ホテルズの【九条ねぎ】と表記しながら【青ねぎ・白ねぎ】を使用していたことは京野菜というブランドを偽装したことになるのでアウト。しかし【鮮魚のムニエル】など10種類以上の商品に使われていた【鮮魚】が冷凍保存した魚であったことは違法とはいえないという。前出『食の安全~』の中村啓一事務局長はこう説明する。
「JAS法では冷凍した水産物も生鮮食品であると定められているので、冷凍して解凍したものを【鮮魚】というのは間違いとはいえません。まぐろなどは鮮度を保つために船上で冷凍しますから、“築地直送鮮魚”は冷凍されたものでOK。ただし“とれたて鮮魚”となると冷凍はNGになります。消費者のイメージは“たった今”ですから、冷凍への説明がつきませんよね。はっきりしたボーダーラインがあるわけではありませんが、消費者が疑問を持つような説明だとNGになります」
フレッシュジュースに関しては必ずしも絞りたてが前提である必要はないという。
「予めお店で絞ったものを冷凍保存し、それを解凍して元の状態にしたものは絞りたてではありませんが、フレッシュジュースといってはいけないかというと判断が分かれると思います」(前出・中村氏)
同様に【手捏ね煮込みハンバーグ】については、前出の唐木氏がこう話す。
「手でこねていなければ違反。既製品でも外注先が手でこねていればOKです。仮にこれが【自家製】とうたっているにもかかわらず既製品だったら、手ごねでもアウトですね」
へぇ~と思った人も多いのではないだろうか? 実は私たちはメニュー表示について、あまり理解していないのかもしれない。また一方で、法律できちんとした定義があるわけではないことも、混乱やトラブルを招く要因でもあるといえる。
例えば、一夜干し。
「これは定められた言葉ではなく一般に使われている商品名です。一晩干した程度に加工された干し物であり、現在は工場で加工しているところも多く、文字通り一夜干ししたものをいうわけではありません」(前出・中村氏)
また若鶏の唐揚げの“若鶏”について、「柔らかくておいしい鶏肉」と認識して、若さの基準を理解していない人も多いだろう。
「若鶏は農林水産省の通達で3か月未満の鶏と決まっています」(前出・中村氏)
この騒動をきっかけに、今一度、家族が口にする食べ物についてじっくり考えたいものだ。
※女性セブン2013年11月14日号