最近話題の「昆虫食」にも食材偽装?! 大人力コラムニストの石原壮一郎氏がモテる昆虫食のススメを説く。
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このところ「昆虫食」が盛り上がっています。今年5月には国連食糧農業機関(FAO)が、将来の食糧危機に備えるためには、昆虫を新たな栄養源として検討すべきだという報告書を発表しました。「虫を食べる」と聞くと反射的に「ウゲッ」と思ってしまいますが、そういえば日本でもイナゴやハチノコは広く食べられているし、世界では約20億人が1900種以上の昆虫を食用にしていると言われています。
もしかしたら「昆虫食に詳しいとモテる」という時代は、すぐそこまでやってきているのかもしれません。公園でセミを捕まえて料理して食べる「セミ会」など、あちこちで行なわれている昆虫食のイベントには、ごく普通の若い女性が押し寄せまくっているとか。
これはムシできないということで、池袋のディープな中華料理店に行ったときに、メニューで見つけた「カイコ」の串焼きを注文してみました。ウズラの卵ぐらいの大きさのサナギが6匹(6個?)刺さっていて200円。外はカリッ中はジュワと、なんだかタコ焼きのような食感で、とくに強烈なニオイや苦みがあるわけではありません。珍味ではありましたが、驚くほど美味というほどでもなく「ま、こんなもんか」という感想でした。
ところが、後日、衝撃の事実が! 昆虫を(食べる意味で)こよなく愛するフリーライターのムシモアゼルギリコさん(11月16日に昆虫食の入門書『むしくいノート』を上梓)によると、日本の中華料理店で出されている「カイコ」のサナギは、ほぼすべて「柞蚕(サククン)」というヤママユガ科の蛾のサナギだとか。
こ、これは、今話題の食材偽装……!! ここで事実を暴露すると、中華料理屋の店主がズラリと並んで、記者のストロボの放列を受けながら「誤表示でした。ごめんなさい」と頭を下げることになるのでしょうか。ならないですね。べつにカイコでもサクサンでもどっちでもいいし、むしろカイコと名乗ってくれないと正体がイメージできません。
勝負デートのときは「カイコ」が出てくるディープな中華料理店に彼女を誘って、さりげなく注文しましょう。「これは実は『サクサン』という蛾の一種で」とウンチクを披露しつつ、「でも、カイコと名乗ってくれたほうが親切だよね。ありがたいなあ」と感謝を示します。わかった上でウソを受け入れ、しかも感謝までしてしまうことで、大人の余裕や器の大きさがにじみ出て、「なんて素敵な人……」とウットリされること請け合い。出てきた「カイコ」にウットリしてくれるかどうかはわかりませんが。
ほかの食材偽装の場合も、同じ手法を使うことで同じ効果があるかも。もちろんお客を騙すのはいけませんが(いちおうこう書きましたからね)、いちいち目くじら立てるより、大人力を見せつけるチャンスだと張り切るほうが建設的かと存じます。
それはさておき、さらにいろんな昆虫食に詳しくなってモテたいと目論む方には、11月23日のお昼12時から東京・新宿のロフトプラスワンで行なわれる「東京虫食いフェスティバル★番外編」がオススメ。なんと当日は、近ごろ大注目の伊勢うどんと栄養たっぷりのハチノコがコラボした「虫のせ伊勢うどん」が登場するという噂もあります。
いや、何を隠そう、「伊勢うどん大使」を務めさせてもらっている私が監修しました。相談を受けたときに「いいのかな……」と一瞬迷いましたが、ハチノコは日本の文化に根ざした伝統食。差別する理由はないし、どんなトッピングもどんな要望もやわらかく受け止めるのが伊勢うどんの身上です。おいしく召し上がっていただくことで、伊勢うどんの懐の深さを感じてもらいつつ、昆虫食への偏見が消え去ってくれることを願ってやみません。