技術が発達し生残率が向上したおかげで無毒フグの生産はすでに始まっているが、出荷の際に「フグ肝も食べられる」とはならず、これまでの養殖フグと同じものとして流通している。新技術を商品特性にしようと2004年と2010年の二度、佐賀県がフグ肝を特例で食用できる「フグ肝特区」を申請したが認められなかった。
厚生労働省食品安全部水産安全係の担当者によれば、安全性を維持する規制を決める機関として慎重に判断した結果、フグ肝特区を認めないことになったのだという。
「フグの食べられる部位について従来の規制を変更するかどうか、食品安全委員会の評価をあおぎました。その結果『フグの毒化機構が明確にされていない』となりましたので、これまで通りの規制を続けています。危険ですので、自分で釣ったフグでも危険な部位は食べないでください」
前出の野口さんは過去、研究の一環として何度か無毒フグの肝の試食会を開いている。自ら毒見をしてみせたあと提供すると、皆が口をそろえて、その濃厚な美味しさに驚くという。江戸時代から「フグは食いたし命は惜しし」と言われるように、古くから美食として知られるフグ。フグ毒の研究と養殖技術がさらに進化し、検査と流通管理体制が整えば、幻の美食「フグ肝」がプチ贅沢品として誰もが口に出来る日がやってくるのかもしれない。