茨城県大洗駅にも『ガールズ&パンツァー』ファンが多く集まる
――2013 年の萌えミリタリーを代表するもうひとつの作品「ガルパン」は来年、映画が公開されてもっと注目を浴びそうですね。
浅井:最初の1 話ではそんなに戦車が出てきませんでした。それほど戦車が前面に出ることなく物語が進むのかと思っていたら、2話からどんどん戦車が出始めてクオリティの高さに驚かされました。キャタピラの動きは複雑で描写はとても難しいため、戦車が動く様子をリアルに描いたアニメは今まであまりありませんでしたが、「ガルパン」で戦車が滑らかに動くのを見たときは、本当に感動しました。すごかったですねえ。CG が発達した今だからこそ可能になったのかもしれません。
――過去のアニメを思い浮かべても、キャタピラといえばガンタンクくらいでしょうか。
浅井:ガンタンクは出てくる回数が少ないですからね(笑)。「ガルパン」は細かいところまできちんと調べてつくられているので、戦車マニアも認める作品となりました。また、あえて小さくて弱いマニアックな戦車を出してきて、それがガリガリ動く様子を見せてくれたことにも感激しました。
たとえば、バレー部ことアヒルさんチームの「八九式中戦車」は日本軍の古い戦車です。弱いので、アニメやマンガなどでとりあげられる機会もほとんどありませんでした。そして、生徒会メンバーのカメさんチームが使う「38(t)戦車」も小さくてあまり強くない戦車です。それらが主人公の大洗女子学園のメンバーとして動いて、撃って大活躍する。普通人気があるのはドイツ軍のティーガーなどデカくて強い戦車なんですが、弱い戦車が活躍すると判官びいきもあって戦車マニアは喜びます。
艦これでも、人気がある戦艦や空母だけでなく、マイナーだった駆逐艦や軽巡洋艦を大きく取り上げているのが軍艦マニアにも受けています。ガルパンにしろ艦これにしろ、ゲームとアニメでフィールドは違いますが、どちらも制作側が本当に戦車や艦艇が好きなんだという情熱が伝わるものでした。ですから、萌え系の作品がそれほど好きではない人も惹きつけることになったのだと思います。
――ガンダムブームの時にガンプラが売れたように、萌えミリタリーのおかげで類似商品も売れているのでしょうか?
浅井:「ガルパン」ではかなり戦車の模型が売れました。艦これでも艦艇の模型や日本海軍の艦艇の解説書の売れ行きが良いですね。弊社の『MC☆あくしず』や『ミリタリー・クラシックス』なども2013年になって部数が増えています。
また、毎年夏に実施される陸上自衛隊の富士総合火力演習(総火演)は、今年は申込数が1.5倍になったそうです。縦横無尽に動く本物の戦車を国内で間近に見られるのは総火演だけですからね。去年と今年で何が違うかと考えたら、戦車人気を高めた「ガルパン」の影響だとしか考えられません。
●浅井太輔(あさい だいすけ)イカロス出版株式会社の季刊誌『MC☆あくしず』、『ミリタリー・クラシックス』副編集長。2005 年出版の『萌えよ! 戦車学校』をはじめ美少女とミリタリーを組み合わせたコンセプトの書籍の編集に数多くたずさわる。2006 年創刊の『MC☆あくしず』は萌えミリタリー雑誌の草分け的存在で、立ち上げから一貫して関わる。好きな艦娘は「神通」と「陸奥」。