ビジネス

「艦これ」なぜヒットしたのか 萌えミリタリー仕掛人が分析

茨城県大洗駅ではアニメ『ガールズ&パンツァー』がお出迎え

 2013 年を振り返るときブラウザゲーム「艦隊これくしょん~艦これ~」は忘れてならないブームのひとつだろう。4 月にサービス開始、10 月にはユーザー数が100 万人を超えた。女子高生が戦車に乗るアニメ「ガールズ&パンツァー」も人気を集め舞台となった茨城県大洗町を多くのファンが訪れた。表舞台に登場した萌えミリタリーブームについて、萌えミリタリー専門雑誌『MC☆あくしず』副編集長の浅井太輔氏に聞いた。

* * *
――「艦隊これくしょん~艦これ~」は軍艦が萌え美少女に擬人化されていますが、きちんとした軍事ゲームになっていると評判ですね。

浅井太輔(以下、浅井):ゲーム自体も絶妙なバランスで作られていて飽きないのですが、ミリタリー的にも「分かっている人」が作っているなという印象ですね。萌えミリタリーが流行っているから適当に作ってみたというものではないと思います。

 私も含めてミリタリーマニアは、映画やゲームなどで制作者が理解してないと思わせる描写があると突っ込みを入れることが多いです。ですが艦これはマニアックな装備や史実に準じたセリフなどが出てきて、かなりの艦艇マニアが作っているというのが分かりますので、ミリタリーマニアも一目置いているのではないでしょうか。

――マニアの枠を超えた人気を獲得していったのはなぜでしょうか?

浅井:最初にこのゲームを話題にし始めたのはやはり、軍艦・艦艇が好きなミリタリーマニアでした。美少女に擬人化されているけれど、史実に基づいて細かいところまで設定してあるとTwitterなどで口コミが広がっていきました。

 またもう一つの流れとして、従来のブラウザゲームやソーシャルゲームと違い、課金をそれほど必要としないという点がゲームファンの間で話題になっていました。ですが、100 万人を超えるユーザーを集めるようになったのは、人気のあるイラストレーターや作家たちが、こぞって艦これで遊び始めたことが大きかったと思います。

「金剛がやっと出てきた」「加賀をロストした」などとツイートしたり、pixiv で欲しい艦娘のイラストをアップするなどしていったんです。そうすると彼らのファンの人たちが興味を持ちゲームに加わっていきました。それまでの萌えミリタリーとは少し違ったアプローチで拡大していったんです。

――これまでは、ある程度ミリタリーに興味がある人たち向けのものが萌えミリタリーだったのでしょうか。

浅井:2012 年にテレビ放送されて人気を集めた、女子高生が戦車に乗るアニメ「ガールズ&パンツァー」(以下、ガルパン)の場合は、もともと戦車や萌えミリタリー好きな人たちが客層の中心で、その周囲にメカ・ミリタリーに興味がある人たちが集まって広がっていったコンテンツだったように思われます。ですが、艦これのユーザーは、今までまったく艦艇やミリタリーに興味がなかった人たちの割合がとても多いです。

 艦これには艦艇の特徴を反映した、さまざまな性格の女の子がたくさん出てきます。艦艇というのは一隻一隻が固有の歴史を持っている。それらを女の子に反映して擬人化し魅力的なキャラクターとなっています。ゲームの話なんですが、どの艦娘(かんむす)がかわいいとか、誰と誰が仲が良いなどユーザー同士で話題にしやすいんです。

 2013 年冬のコミックマーケットでは艦これ関連のサークルがものすごく増えているそうです。キャラクター同士の関係性を空想させる魅力が詰まっているのでしょう。ミリタリー好きな人に限らず、かわいい女の子が好きな人の多くが艦これにひきつけられています。

――艦艇と擬人化は相性が良いのでしょうか?

浅井:飛行機や戦車は基本的には量産品ですが、艦艇はひとつひとつに名前と歴史があります。個性が際立ちやすいので艦艇の方が性格は出しやすいかもしれないですね。

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト