2013年3月、杉並区の母親たちが立ち上がり、それまで当事者しか関心のなかった待機児童問題がようやく広く知られることになった。横浜市が「待機児童ゼロ」宣言をして脚光を浴び、企業への助成や遊休地の活用などで保育園を増やした方法が「横浜方式」として全国に広がりを見せている。安倍首相は5年間で40万人分の保育整備を進めるとぶち上げたが、実現できるのか。保育問題に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さんに聞いた。
* * *
横浜市が3年間で9000人も保育園での受け入れを増やしたことは、本当にすごいと思います。でも厳密にいえば、育休を延長した人や自宅で仕事を探している人、特定保育園のみの申し込み者を除いた「ゼロ」なので、数え方がおかしいんです。
しかも基準をゆるめて急速に保育園を増やした結果、環境がいいとはいえない保育園も増えてきています。
待機児童問題は依然深刻で、表に出ていない分も合わせると、全国に60万人はいるといわれています。国は5年間で40万人分の保育整備をするといっていますが、それに対応する保育士を確保するのは不可能。「待機児童解消を求めるなら環境の良さはあきらめてほしい」という専門家さえいますが、それでは事故が心配です。
実際、一昨年には認可保育園で6人、認可外で12人もの児童が事故で亡くなっているのですから。実は2015年から制度が大きく変わります。介護保険のように、“保育の必要度”が認定されないと保育園に申し込めなくなるんです。
「今、仕事を探しています」という人は、どうしても認定が低くなるはずで、これでは困るお母さんがものすごく増える。
「うちは認定がなくても預かる」という園が出てくるでしょうが、保育の質が悪かったりする可能性もあると予想されます。
今年はその過渡期。新制度になる前に、年内中に駆け込みで保育園に入ろうという人が増えるので、保活バトルがさらに熾烈になりそうです。
※女性セブン2014年1月23日号