ビジネス

はなまるうどん「かけ小」130円への値上げに侃々諤々議論

 和食のユネスコ無形文化遺産への登録が決まり、日本の食文化に注目が集まっている。一方で、2013年は多くのホテルなどで食材・メニューの偽装が発覚した。「こっそりコストカットするのは簡単です。しかしそれは結果としてお客様を減らすことになる」と語るのは、セルフ式うどん店をチェーン展開する「はなまる」の成瀨哲也社長だ。

 同社は昨年3~8月期の営業利益で前年同期比67%増を達成。グループ会社の吉野家を初めて上回り「うどんが牛丼を抜いた」と話題になった。同氏が業界を覆う偽装問題を論じる。

 * * *
 はなまるの経営理念は常にお客様の声に耳を傾けて「本当」「本物」「正直」を貫くこと。従業員にはこれを新人研修から徹底して叩き込んでいます。もちろん理念だけではダメで、行動を伴う必要があります。

 昨年相次いだ飲食業の食材・メニューの偽装表示はそうした理念の対極にあるものです。同業者としての経験から、それらは組織が内向きになることで発生すると考えられます。

 多くのケースできっかけとなったのは、株主や親会社からの収益へのプレッシャーではないでしょうか。現場から離れたところで、親会社などから「来期はどの程度見込めるか」と増益を求められる。

 上場企業では株主のプレッシャーも強いから、経営陣は当然利益を確保しようとする。その結果、現場はお客様に対してではなく、親会社や株主のために“真面目に”頑張り過ぎてしまう。

 利益を増やすのは簡単です。例えばうどんなら、麺を少し短くしたり、天ぷらのサイズを少し小さくしたりすればコストはすぐに抑えられる。極論すれば、お客様に告知しなくてもできます。しかし、それをやってしまうことで感覚が麻痺し、最終的には「もっと安いものを使おうか」となる。それは偽装などの要因になるのではないでしょうか。

 加盟店が急増した2003年ごろの一時期、はなまるも「利益を上げたい」という内向きの意見に押され、天ぷらのサイズを小さくするなどして粗利額を確保したことがあります。すると少しずつ客足が遠のき、閉店する店舗も少なくなかった。ビジネスたるもの嘘があってはいけない。お客様が不利益を被ることをすれば、必ずその報いを受けるのです。

 昨年11月、はなまるうどんは「かけ(うどん)小」の価格を105円から130円に値上げしました。原材料の高騰、円安による輸入価格上昇が重なり、ついに価格維持が困難になったのです。「一杯105円」は創業期から続く我が社の看板商品。

 そのため「麺を短くして価格を維持してはどうか」など、社内で侃々諤々の議論がありました。しかし結局、経営理念に立ち返って、お客様に「原料が上がっているので値上げします」と正直に伝えることにしました。

※SAPIO2014年2月号

関連記事

トピックス

カジュアルな服装の小室さん夫妻(2025年5月)
《親子スリーショットで話題》小室眞子さん“ゆったりすぎるコート”で貫いた「国民感情を配慮した極秘出産」、識者は「十分配慮のうえ臨まれていたのでは」
NEWSポストセブン
宮城野親方
《白鵬に若手親方から評価の声出るも…》「宮城野部屋の復活」が先送りされるウラに「相撲協会執行部が“第2の貴の乱”を恐れている」との指摘も
NEWSポストセブン
気持ちの変化が仕事への取り組み方にも影響していた小室圭さん
《小室圭さんの献身》出産した眞子さんのために「日本食を扱うネットスーパー」をフル活用「勤務先は福利厚生が充実」で万全フォロー
NEWSポストセブン
“極秘出産”していた眞子さんと佳子さま
《眞子さんがNYで極秘出産》佳子さまが「姉のセットアップ」「緑のブローチ」着用で示した“姉妹の絆” 出産した姉に思いを馳せて…
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《日本中のヤクザが横浜に》稲川会・清田総裁の「会葬」に密着 六代目山口組・司忍組長、工藤會トップが参列 内堀会長が警察に伝えた「ひと言」
NEWSポストセブン
5月で就任から1年となる諸沢社長
《日報170件を毎日読んでコメントする》23歳ココイチFC社長が就任1年で起こした会社の変化「採用人数が3倍に」
NEWSポストセブン
石川県をご訪問された愛子さま(2025年、石川県金沢市。撮影/JMPA)
「女性皇族の夫と子の身分も皇族にすべき」読売新聞が異例の提言 7月の参院選に備え、一部の政治家と連携した“観測気球”との見方も
女性セブン
日本体操協会・新体操部門の強化本部長、村田由香里氏(時事通信フォト)
《新体操フェアリージャパン「ボイコット事件」》パワハラ問われた村田由香里・強化本部長の発言が「二転三転」した経過詳細 体操協会も調査についての説明の表現を変更
NEWSポストセブン
岐阜県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年5月20日、撮影/JMPA)
《ご姉妹の“絆”》佳子さまがお召しになった「姉・眞子さんのセットアップ」、シックかつガーリーな装い
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《極秘出産が判明》小室眞子さんが夫・圭さんと“イタリア製チャイルドシート付ベビーカー”で思い描く「家族3人の新しい暮らし」
NEWSポストセブン
ホームランを放ち、観客席の一角に笑みを見せた大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平“母の顔にボカシ”騒動 第一子誕生で新たな局面…「真美子さんの教育方針を尊重して“口出し”はしない」絶妙な嫁姑関係
女性セブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《木漏れ日の親子スリーショット》小室眞子さん出産で圭さんが見せた“パパモード”と、“大容量マザーズバッグ”「夫婦で代わりばんこにベビーカーを押していた」
NEWSポストセブン