まさに土俵際(写真/JMPA)
元横綱・白鵬の宮城野親方が興した宮城野部屋が、元幕内・北青鵬の暴力事件で閉鎖されてから1年以上が経過した。昨年4月から一門の伊勢ヶ濱部屋に弟子とともに転籍しているが、部屋の処遇について理事会で協議されるという情報が伝わってこない。相撲ジャーナリストが言う。
「5月場所後、伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)が65歳の定年を迎えるのに合わせ、弟子の元横綱・照ノ富士が『伊勢ヶ濱』の年寄名跡と部屋を継承することになっている。一時はこのタイミングで宮城野部屋も再興されるのではないかと見られていたが、協会執行部は過去の閉鎖された部屋の前例などに倣って最低でもあと1年は現状のままとするつもりのようです。伊勢ヶ濱部屋の師匠が後輩横綱の照ノ富士に代わるかたちですが、宮城野親方にとっては屈辱的な処遇でしょう」
一方で、協会執行部による“厳罰”の姿勢とは対照的に、若手親方衆の間では宮城野親方の存在感が高まっているという。
「積極的に若手親方衆に声を掛けてコミュニケーションを図ろうとする姿が多くなったとする声があります。また、今場所は序盤に立て続けに星を落としたモンゴル出身横綱の豊昇龍を激励する場面も目立った。豊昇龍は新横綱として土俵に上がった3月場所では、61年ぶりとなる金星3個を配給し、途中休場に追い込まれた。今場所も3日目と4日目に平幕に敗れて通算5個目の金星を与えています」(協会関係者)
金星を配給してばかりの横綱は協会側からの評価が大きく下がり、それが続けば現役続行が難しくなるともいわれる。若手親方が言う。
「まだ20代とはいえ豊昇龍も窮地なのですが、宮城野親方は2日連続の金星配給となった4日目の取組後に支度部屋に現われ、風呂場で豊昇龍に対して“横綱になるのは難しいけど、横綱になったら勝つのも難しい。自分の相撲を取ることだけを考えろ”とアドバイスした。その翌日の豊昇龍は白星をあげ、3日連続金星配給を避けることができた。
するとその日も宮城野親方が支度部屋に姿を現わし、“これでいいんだ”と声を掛けた。これにより豊昇龍が5日目から立ち直れたともいわれています。大の里の日本出身横綱誕生の行方ばかりに気にする執行部と違い、現場がよく見えているということで、現役時代に戦った若い親方衆から評価する声が相次いで聞こえました」