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多国籍的企業のタックスヘイヴン使った租税回避が国際問題化

 資産運用や人生設計についての多数の著書を持つ作家・橘玲氏が、世界経済の見えない構造的問題を読み解くマネーポストの連載「セカイの仕組み」。ここでは、国際問題として浮上しているタックスヘイヴンを舞台にした企業の“税の最適化”について解説する。

 * * *
 2012年5月、フランスでは新自由主義的な改革を目指していたサルコジを破って、格差是正を掲げたオランドが大統領に就任した。オランド政権は富裕層への所得税増税を選挙の公約に掲げており、年収100万ユーロ(約1億3000万円)を超える個人の所得税率を40%から75%へと大幅に引き上げようとした。

 反発の大きさに新政権は、増税を2年間の時限措置にすることで理解を得ようとしたが、高級ブランドを展開するモエヘネシー・ルイヴィトンの最高経営責任者(CEO)がベルギー国籍を申請するなど、富裕層の国外脱出が止まらなくなった。

 世界には、金融所得に課税せず、贈与税・相続税がなく、海外から得た所得が非課税で、所得税率もきわめて低い国や地域がある。ヨーロッパにはこうした“タックスヘイヴン国”がいくつもあり、課税を強化すると富裕層が逃げ出してしまう。

 福祉国家であり「重税国家」としても知られるスウェーデンは、2004年に贈与税・相続税を、2007年に資産にかかる富裕税を廃止してしまった。そのきっかけは、世界最大の家具販売店イケアと、食品用紙容器の大手テトラパックの創業者一族がスウェーデン国籍を放棄したことだという。これはいまや欧米だけの問題ではなく、日本でも大手企業の創業者やCEO、株式を上場させたベンチャー起業家などがシンガポールに移住している実態が明らかになった。

 イギリスでは2012年10月、コーヒーチェーン大手のスターバックス英国法人が、過去3年間に4億ポンド(約600億円)の売上げがありながら法人税をほとんど納めていなかったと報じられ、消費者団体などから不買運動を起こされた。これを受けてスターバックスは、2013年と2014年度の2年間は、利益の有無にかかわらず法人税として毎年1000万ポンド(約15億円)を納めると発表した。

 グローバル企業による過度な節税は米国でも問題になり、グーグル、アマゾン、アップルなどの有名企業があいついで槍玉に挙げられた。とりわけアップルは、アイルランドやオランダとの租税条約を抜け穴に納税額を不当に低く抑えているとして、ティム・クックCEOが上院の公聴会に呼び出され釈明を余儀なくされた。

 アイルランドやオランダは、多国籍企業が法人税を回避するために使うタックスヘイヴンとして知られている。個人の脱税や租税回避だけでなく、タックスヘイヴンを使ったグローバル企業の“税の最適化”が国際問題として浮上してきたのだ。

(連載「セカイの仕組み」より抜粋)

※マネーポスト2014年新春号

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