国際情報

iPad2購入のため35万円で腎臓売った中国少年 重い腎不全に

 年間1万件以上の臓器移植手術が実施され、移植希望患者は150万人に上るといわれる中国では、死刑囚や身元不明遺体の臓器流用が日常的に行なわれてきた。2006年、当局による気功集団「法輪功」信者の臓器摘出疑惑が浮上。カナダ人弁護士、デービッド・キルガー氏らの調査で中国政府による「臓器狩り」の実態が報告され、欧米諸国から激しい非難を浴びた。

 「中国では政府、軍、司法当局、医療機関、そしてブローカーが、組織ぐるみで富裕層や外国人相手の臓器売買ビジネスを行なってきた。不当に投獄された数万人の『法輪功』学習者(※注)も『ドナー』として利用されている。有力な証言によれば、心臓麻痺を誘発する薬物注射を打たれ、生きたまま肝臓や腎臓を摘出される者もいた」(キルガー氏)

 中国政府はこの調査内容を全面否定すると同時に、国際社会の批判を封じるべく矢継ぎ早に対策を講じた。2006年には、商業目的の死体売買を禁じる「死体処理管理規定」を公布。2007年にはドナーの同意なき臓器摘出を禁じた「人体器官移植条例」を施行した。これにより、生体移植は原則として血縁者間に限られ、外国人への移植も事実上、禁止された。また昨年11月には「14年中の死刑囚ドナーの臓器移植停止」も表明している。

 中国における臓器不足が深刻化すると闇市場が広がった。

「ここ数年はネットを利用した臓器売買が盛んで、生活困窮者が臓器を売る事例が増えている。主流は需要の多い腎臓の生体移植だ。医療機関と患者を仲介するブローカーが、臓器売却希望者をアジトに軟禁することもある」(北京在住ジャーナリスト)

 ブローカーは、3万元(約52万円)程度で仕入れた腎臓を、その数倍から10倍の値段で売りさばく。中国での移植費用の相場は、角膜=300万円、腎臓=650万円、肝臓・肺・心臓=1300万~1500万円といわれている。ブローカーは患者とドナー間の「親族証明」や戸籍などの公的書類を巧みに偽造し、連携する医療機関で手術を行なうため摘発は困難だ。

 2012年5月、浙江省杭州市で売腎を希望する20代の男性30人が警察に保護された。彼らはマンションの1室で集団生活を送り、適合患者が現われるのを待っていた。動機は借金の返済などさまざまだが、「家族に少しでも良い暮らしをしてもらうため」という農村出身の若者もいた。腎臓の対価は3万5000元(約60万円)だった。わずかな金欲しさに臓器を売る若者は後を絶たず、「iPad2」購入のため腎臓を売った17歳の少年は、2万元(約35万円)と引き換えに重い腎不全を患った。

※注:法輪功は「宗教ではない」との立場からメンバーを「学習者」と呼んでいる。

※SAPIO2014年3月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
Instagramにはツーショットが投稿されていた
《女優・中山美穂さんが芸人の浜田雅功にアドバイス求めた理由》ドラマ『もしも願いが叶うなら』プロデューサーが見た「台本3ページ長セリフ」の緊迫
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
スポーツアナ時代の激闘の日々を振り返る(左から中井美穂アナ、関谷亜矢子アナ、安藤幸代アナ)
《中井美穂アナ×関谷亜矢子アナ×安藤幸代アナ》女性スポーツアナが振り返る“男性社会”での日々「素人っぽさがウケる時代」「カメラマンが私の頭を三脚代わりに…」
週刊ポスト
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン