ライフ

黒田官兵衛と竹中半兵衛 友情の絆示す逸話を松平定知氏紹介

関ヶ原古戦場に立つ松平定知氏

 NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』が放映中だが、数々の策略を巡らせた黒田官兵衛と竹中半兵衛の因縁の地・関ヶ原を訪れたのは、新刊『謀る力』(小学館新書)を上梓したばかりの元NHKアナウンサー・松平定知氏。松平氏が関ヶ原で、二人の関係に思いを馳せる。

 * * *
 いま私が立っているのは、岐阜県関ケ原町にある岡山の頂上です。天下分け目の戦い、関ヶ原の合戦で、この山頂に陣を張ったのが黒田長政と竹中重門でした。この二人がともに手を取り、西軍の島左近軍と対峙したときの胸中はいかばかりかと、合戦の日に思いをはせます。というのも、この二人の間には深い因縁があるからです。長政と重門はそれぞれ、豊臣秀吉に仕えた二人の軍師、黒田官兵衛と竹中半兵衛の嫡男です。

 先日発売された拙著『謀る力』では、戦国武将らが生き残るためにいかに策を巡らせていたかを紹介し、現代を生きるヒントを提示しています。その中で、“秀吉の二兵衛”と称されたこの二人についてももちろん触れています。

 官兵衛の“謀る力”が最大限に発揮されたのが、歴史に残る「中国大返し」です。本能寺の変の報を受けた官兵衛は、すぐさま毛利軍と和議を結ぶと、数万の軍勢を率いて猛スピードで京に駆け戻り、明智光秀を討ち取りました。秀吉がポスト信長のトップに立ち、天下獲りに近づくよう謀ったのです。

 一方の半兵衛がその名を天下に轟かせたのが、難攻不落とされた斎藤龍興の稲葉山城攻略です。龍興に弟を人質にとられていた半兵衛は、弟の病気見舞いと称し、変装させた家臣を引き連れて堂々と稲葉山城に登城、夜間に城の内部から蜂起して城を乗っ取りました。

 この二人の間には友情の絆を想起させるこんなエピソードがあります。官兵衛の子・長政は、幼少時に官兵衛が織田派に乗り換えた際に人質として信長に差し出されました。その後、信長の家臣の一人が反旗を翻したとき、官兵衛は単身で説得に向かいましたが、捕えられ幽閉されてしまいます。

 信長は、音信不通となった官兵衛を寝返ったと思い込み、「人質を殺せ」と秀吉に命令します。このとき半兵衛は、官兵衛を信じ、信長に内緒で長政をかくまいました。長政は半兵衛に命を救われたのです。

 一方の半兵衛の子、重門はもともと西軍に属していましたが、長政の説得で東軍に移りました。関ヶ原は重門の領地で、彼の案内で長政は軍を指揮し、石田三成の喉元に匕首を突きつけるように迫り、東軍勝利に貢献しました。重門は長政のおかげで勝ち組に残れたといえます。

 世代を超えて友情の絆が継承されていたと思うのは、私だけではないでしょう。(談)

撮影■太田真三

※週刊ポスト2014年4月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン