国内

建築家 今後の課題は「人の流れ」をデザインする分煙スタイル

最優秀賞を受賞した「裏表問題」

2014年4月13日、「SMOKERS’STYLE COMPETITION 2013」プロポーザル部門の公開二次審査会、表彰式が行われた。これは「人を分けずに煙を分ける」をテーマに、たばこを吸う人にとっても吸わない人にとっても快適で双方が共存できる環境の実現を目指した建築のコンペ。6回目となる今回は、オフィス内部のパブリックスペースでの分煙空間を、具現化を前提として提案を募った。そこで寄せられた229点のうち、同日は1次選考を通過した8点について公開審査が行われた。

作品は、「人を分けない」ということで、なるべく吸う人と吸わない人の間に壁をつくらないようにしたり、あるいは壁の間から両者の顔が見えるようにしたりと、“人の動線”に配慮した作品が多かった。例えば天井に勾配の変化をつけて煙が集まるようにしたもの、喫煙スペースを建物の柱の一部にデザインしたもの、煙を竜巻のようにし、天井から吸い上げるものなどだ。

そのなかで、最優秀賞に輝いたのは、三木真平・黒田美知子氏の「裏表問題」とした作品。与えられた場所に、曲面の壁をさまざまな角度を振って配置し、その壁によって人のいる場所を限定し、一部が排気機能を有するといったもので、たばこを吸う人も吸わない人も利用することができる場をつくるアイデアだ。実現可能性が高く買われ、最も多く票が入った。これについて、新建築社の担当者は、

「具現化にあたっては、風除室はどうつくるか、煙の流れをどのようにコントロールできるかなど、クリアするべき課題は多々あると思います。しかし、このアイデアはより柔軟に対処でき、吸う人と吸わない人の共存をもっとも具体化しやすいのではないか」

と話す。

また、議論が白熱したのは、優秀賞を受賞した、東京大学大学院・北潟寛史氏らの「共生のニワ」。オフィスの内部に庭をつくり、ダクトで煙を吸い、ニコチンを土壌で分解するという“循環”をテーマにした作品だ。建築家から「屋内に土を持ち込んで、そんなにうまくいくのか」と厳しい指摘が寄せられるも、審査会場にデモ機を持ち込んでプレゼンを行うなど、熱意を見せた。実現可能性は低いものの、学生ならではの自由な発想に、建築家からは「コンセプトは秀逸」という声や、「土ではなく、他のものなどで実現できるのでは」と今後のブラッシュアップを望む声も出るなど、もっとも関心を集めた作品といっていいだろう。

全体を通し、審査員である建築家らは、コストや現実性など、よりリアリティを求めた提案を要望。西沢大良建築設計事務所代表の西沢氏は「煙を処理すればよいでしょ、というレベルにとどまってはいけない」と述べ、今後建築家やデザイナーにとっては避けて通れない「分煙」スペースのつくり方について、より研究する必要があることを示唆した。

「人を分ける」ことは簡単だ。しかし、それではいつまでたっても“対話”は生まれない。それは分煙に限ったことではないだろう。「分断」ではなく、「共存」。建物のあり方をデザインすることで、文化や人々のライフスタイル、コミュニケーションまで変わる。互いに思いやることができ、また人々の生活がより活性化するようなデザインの力に期待したい。

関連記事

トピックス

大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
「What's up? Coachella!」約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了(写真/GettyImages)
Number_iが世界最大級の野外フェス「コーチェラ」で海外初公演を実現 約7分間、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
天皇皇后両陛下、震災後2度目の石川県ご訪問 被災者に寄り添う温かいまなざしに涙を浮かべる住民も
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
大谷翔平を待ち受ける試練(Getty Images)
【全文公開】大谷翔平、ハワイで計画する25億円リゾート別荘は“規格外” 不動産売買を目的とした会社「デコピン社」の役員欄には真美子さんの名前なし
女性セブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン