人気なのは濃い琥珀色の一番麦汁と薄めの色の二番麦汁の飲み比べ体験。比べれば見た目も味も香りも明らかに違うことに多くの客が驚く。
「一方的にこだわりを伝えようと思っても伝わらない時代だと思います。逆に、麦汁飲み比べのような“体験”をすれば、お客様がSNSや口コミなどでどんどん情報を広めてくれる」(門田氏)
セミナーは3月末までに200店舗で実施、約1万5000人が参加した。年内に1200店舗、10万人を目指す。
黒杭氏が勤める滋賀工場では流通担当者向けの工場見学を実施する一方、工場従業員が酒販売り場に立ってサンプリングなどを行ない、一般客に商品を説明しているという。 テレビCMでも「一番」の意味と価値をもう一度、消費者に伝えようとしている。
そうした甲斐あり、今年1~3月、一番搾りの販売量は前年比9.1%増となった。特に缶では約3割の大幅増。キリンのビール類全体の出荷量は6.1%増だ。
消費増税の駆け込み需要を考慮しても「好調」(広報担当)というが、1~3月ではビール類出荷量のシェアを落としていることも見逃すわけにはいかない(前年比1.2%減)。他社が新製品を投入して出荷量を増やしたことが背景にある。ライバルとの戦いがますます激化することは間違いない。
※SAPIO2014年6月号