そのなかから候補を絞り込んでいく作業も容易ではない。
「最近は世界のどこでも使えるものというニーズが高まっています。国ごとに異なる商標権の問題をクリアしなくてはならないので、弁理士や弁護士に依頼して登録商標を事前調査します。またデザインが外国の文化や宗教的に問題ないかを調べることも重要です」
そうしたプロセスを経て絞り込み、企業側に提示するのは、わずか5~6点にすぎない。最終決定は役員会に諮られることもあれば、企業トップが独断で決めることも。なかには、トップが「センスがないから」といって従業員にアンケートを取る企業もあるという。
晴れて決まっても、それで終わりではない。
「カタログやパンフレットに名刺、営業車、またはウェブ上でマークをどう使うかという細かいシステムづくりも担います。ブランドの約束事や視覚的表現などを提案して、ブランドの世界観を発信するところまで手がけます」
驚くことに、そのデザイン料は1億円を超えることも!!
「『シンボルマークひとつで数千万円なんて、いい商売だね』と思われるかもしれませんが、それぞれがオーダーメイドであり、時間も費用も相当かかります」
そうして、ようやく人目に触れる会社ロゴマークの「色」にも流行がある。
「世界的に最も使われる色は青と赤で、テクノロジー企業は知的で洗練されたイメージのある青、食品メーカーは美味しく見せる効果がある赤を好む傾向がある。高度成長期やバブル期までは派手ではっきりした原色が多かったのですが、最近はおとなしく柔らかい印象を与える中間色が目立っています。優しいイメージで顧客との目線を合わせようとする傾向が見られます」
撮影■林紘輝
※週刊ポスト2014年6月27日号