あと2か月早ければ増税前に買えたのに──そんな考えが、ふと頭をよぎった。神奈川県在住の40代会社員A氏は、5月にマイカーの急な故障に襲われた。業者に相談するとエンジン系統の不調で、修理には少なくとも20万円ほどかかるという。
12年前に買ったドイツ車で、価格は中古で150万円ほど。今や走行距離は10万kmを超えていた。修理して乗り続けても、おそらく今後も不調と付き合っていくことになり、その度に修理をするのも馬鹿馬鹿しい。であれば──と買い換えを決意した。
しかし前の車を買った時と違って今は妻がいる。勝手に好きな車を買えるわけではない。妻から提示された条件は「200万円まで」。新車だと、選択肢は限られる。「中古でも好きな車に乗ろう」と割り切って、中古車ディーラー巡りを始めた。
憧れだったBMWをはじめとする輸入外車の取り扱いがあるディーラーを訪れた。安いものもあるが、そうなると型落ち、走行5万kmが関の山。
「それなら国産の新車がいいかな」と、逡巡していると、販売員がこう声をかけてきた。
「まだ店頭には出していないんですけど……」
そして見せられたのは、走行距離わずか25kmのBMWだった。SUVタイプの現行モデルで、登録年度は昨年。新車なら500万円はする。しかも、車検はまだ2年残っている。試乗車として、ほんのわずか使われただけという。
値段を聞いてさらに驚いた。300万円! 予算をオーバーしていたが、これは出物だ。すぐさま妻に交渉して100万円の予算増を説得し、ローンを組んでの購入を決めた。
※週刊ポスト2014年7月4日号