一方、ひとりのトレーナーも帯同させていないのが、新潟代表の日本文理だ。ふだんは学校の前にある整骨院で選手たちは身体のケアをしているが、甲子園では選手たちの自己管理に任されている。エースの飯塚悟史選手は、準々決勝まで、全試合全イニングを投げていた。21日に3回戦で9イニング129球投げた翌日の22日、準々決勝でも9イニング142球投げ抜いた。準々決勝までの4試合36イニングで合計548球を投げている。 飯塚選手は、
「人から聞いたり自分で学んだことをして実践しています。投げた日はアイシングしたあと、熱いお風呂に10分ぐらいつかり、しっかり睡眠を取るように心がけています。連投の覚悟はあります。そのために練習をしてきました」
と自信を見せる。実際、連投となった準々決勝戦でも140キロ台のストレートが何球もあり、外見的には疲れを感じさせなかった。前出の西村さんは、
「投球後のコンディショニングとしては非常にいいと思います。アイシングは炎症が起こっている部位を中心にその炎症や痛みを抑制する効果が期待できますし、その後の入浴は体全体の血流をよくすることで疲労物質を早く取り除き、細胞再生を促します。私も基本的にはこのように指導しています」
と、飯塚選手の自主管理を評価しつつも、
「連投が予想される大会で、そばに専門家がいないのはやはり心配です」
という。日本文理の佐藤琢哉部長も
「本当はトレーナーが帯同していた方がいいと思います。しかし大会期間中ずっと拘束するとなると、その費用が捻出できない」
と、苦しい胸の内を明かす。
投手の肘と肩の問題が浮上する度に、「投球制限」「登板制限」が話題に上る。だがその前に、私は甲子園に出場が決まって大阪にチームが来たら、高野連が各校に「身体の専門家」を派遣すべきではないかと思う。そして勝ち進んでいる間は毎日、専門家が選手のケアをする。そうすれば投手だけでなく野手の体調管理もできるし、そこで蓄えた知識を今後の野球生活に活かすこともできるだろう。
もちろんこれには大きな経費がかかる。高野連にそのような財政的余裕がないのなら、思い切って選手のヘルメットに企業広告を付けたらどうか。あるいは有料席を数百円値上げしてもいい。「値上げ分は選手の体調管理の費用として使われます」と明記すれば、ファンも理解と支持もしてくれると思う。どうだろうか。