ライフ

春画発掘・普及に尽力した研究者の死 大英博物館も冥福祈る

 春画の発掘と普及に尽力した孤高の研究者、白倉敬彦(しらくらよしひこ)氏がこの世を去ったのは10月4日だった。今春に小細胞肺がんが発覚し、闘病生活を続けていたが、無念にも力尽きた。享年75。

 白倉氏は本誌『週刊ポスト』人気シリーズ「江戸のSEX」で監修の役割を務め、江戸時代のエロスについてわかりやすく解説した。8月15・22日号の「『春画』と『エロ漫画』の系譜」にも病床から解説コメントを寄せてくれた。

 国際日本文化研究センターの早川聞多教授は白倉氏の功績をこう語る。

「昨年10月3日から大英博物館で開催され、世界的な話題となった『春画展』は、白倉さんの研究と尽力がなければ実現できなかった」

 国際浮世絵学会会長で、岡田美術館館長の小林忠氏は、白倉氏の研究は日本よりもむしろ海外で高く評価されていたと証言する。

「白倉さんの訃報を、大英博物館の主任学芸員ティモシー・クラーク氏に知らせたら、すぐ『大変に残念だ。ご冥福を祈る』と心のこもった返信がありました」

 白倉氏は「春画=ポルノではなく、浮世絵の重要な一ジャンル」と説き、「純粋な芸術として評価すべき」、「江戸の庶民文化を現代に伝える貴重な資料」だと主張した。その見識が日本よりも先に欧米で受け入れられたのは、白倉氏にとってばかりか、我が国の美術史においても皮肉なことである。

 法政大学総長で江戸文化史研究の第一人者である田中優子氏も、白倉氏の死を惜しむ。

「春画がアカデミックな意味で国際的な注目を集めたのが、白倉氏の企画で1994年に開催された米インディアナ大学でのシンポジウムでした。海外の浮世絵研究家たちに、『日本の春画研究はミスター・シラクラが下支えしている』は共通認識になっています」

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
米国の大手法律事務所に勤務する小室圭氏
【突然の変節】小室圭さん、これまで拒んでいた記念撮影を「OKだよ」 日本人コミュニティーと距離を縮め始めた理由
女性セブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
現役を引退した宇野昌磨、今年1月に現役引退した本田真凜(時事通信フォト)
《電撃引退のフィギュア宇野昌磨》本田真凜との結婚より優先した「2年後の人生設計」設立した個人事務所が定めた意外な方針
NEWSポストセブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
中森明菜復活までの軌跡を辿る
【復活までの2392日】中森明菜の初代音楽ディレクターが語る『少女A』誕生秘話「彼女の歌で背筋に電流が走るのを感じた」
週刊ポスト
世紀の婚約発表会見は東京プリンスホテルで行われた
山口百恵さんが結婚時に意見を求めた“思い出の神社”が売りに出されていた、コロナ禍で参拝客激減 アン・ルイスの紹介でキャンディーズも解散前に相談
女性セブン
真美子夫人は「エリー・タハリ」のスーツを着用
大谷翔平、チャリティーイベントでのファッションが物議 オーバーサイズのスーツ着用で評価は散々、“ダサい”イメージ定着の危機
女性セブン
猛追するブチギレ男性店員を止める女性スタッフ
《逆カスハラ》「おい、表出ろ!」マクドナルド柏店のブチギレ男性店員はマネージャー「ヤバいのがいると言われていた」騒動の一部始終
NEWSポストセブン