これにより、卑弥呼の邪馬台国が登場する3世紀半ばまでに、倭国の中心が九州から近畿に移ったとみている。それを根拠に邪馬台国=畿内説を唱える考古学者は多い。そのため、歴史学者など文献史学者は九州説を、考古学者は畿内説を唱える傾向がある。
 
 畿内説を支持する研究者にとって、邪馬台国の所在地として最有力なのが纒向遺跡(奈良県桜井市)だ。3世紀の遺跡で、東西2km、南北1.5kmという当時の集落として類を見ない規模を有し、周辺には卑弥呼の墓と目される箸墓古墳などこの時期の墳墓が多数ある。発掘は現在も続いており、これまで土器や木製品、多数の桃の種などが出土したほか、宮殿ともみられる巨大な建物が整然と並んで建っていたことがわかっている。
 
 今後、纒向遺跡などでまだまだ新発見の余地があり、畿内説の研究者にはその「蓋然性の高さ」を証明できることが期待されている。が、それで邪馬台国の所在地論争が終わるわけではない。
 
 現在、学術関係者ではない、各地の民間有志による邪馬台国研究会が数多く活動しているが、今年、その全国組織「全国邪馬台国連絡協議会」も結成された。その謎をめぐる議論はアカデミズムの枠を超え、古代史にロマンを求める多くの人々を惹き付けてやむことはない。
 
※SAPIO2014年12月号

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