そして貸す側には一切のメリットはない。無事完済した後、借りた側の生活が安定した時に「あの時、中川さんが助けてくれたから今のオレがあるんですよぉぉぉ!」なんて、自分が気になっている女の前で言われ「よしよし、オレって男気あるでしょ? ◯◯ちゃん、オレのこと好きになってね」程度の気持ちの良さを得られる程度である。こうした8回の借金経験を経て、私が現在辿りついた境地はこれだ。
【1】借金を申し込まれるような深い仲にならぬよう、浅い付き合いを心がける。
【2】経営者とは極力知り合いにならない。安定した企業の人と付き合うようにする。
「その人に対し、ビビビと来るかどうかが重要じゃん!」「気が合ったり、その男気にホレた、ってな関係こそが自然じゃないの?」「親友を作ることこそ、人生を豊かにするはずじゃん!」なんて思われるかもしれないが、違うのである。これらはカネの力の前には無力である。
人間というものは、貧すれば鈍する。「お金よりも友情が大切だ」は微妙に違う。「生活に困らない程度のカネがあってこそ、友情は成立する」が本当のところだ。「モノより思い出」も嘘だ。「モノがあってこその思い出」が本当だ。もしも本気で「友情はお金で買えない」と信じている人がいたら、ぜひとも100万円単位でお金を貸してあげて欲しい。話はそこからだ。
友情というものは、互いに依存することなく、独立し、自我が確立し合った「個」が出会うことで、ようやく成立するものなのである。カネが絡むともはやそこに友情はない。そこに存在するのは上下関係だけである。そして100万円のカネで簡単に瓦解する。それはその前に30年の付き合いがあったとしても、だ。
※中川淳一郎・著/『縁の切り方~絆と孤独を考える~』より