これまで子ども向け作品は、時代劇とたびたびコラボしてきた。特にテレビの人気シリーズ『仮面ライダー』ではその影響が顕著なものが目立つ。そのなかでも、劇場映画として公開された仮面ライダーシリーズのなかから、時代劇のテイストを盛り込んだ作品について『時代考証学ことはじめ』などの著書がある編集プロダクション三猿舎代表・安田清人氏が解説する。
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テレビの人気シリーズである『仮面ライダー』だが、実は劇場映画としての歴史も古く、数多くの作品がスクリーンを飾っている。
昭和46年(1971)4月にテレビ放映が始まってからわずか3か月後に公開された子ども向けの映画イベント『東映まんがまつり』の中の一作『ゴーゴー仮面ライダー』が、その第1弾。以後、『東映まんがまつり』の看板作品として、1970年代の子どもたちを熱狂させた。
筆者を含む当時の子どもたちは、『東映まんがまつり』か、こちらは「ゴジラシリーズ」を目玉作品とする『東宝チャンピオンまつり』の、少なくともどちらか(できれば両方)を観に連れていってもらうために、夏休み、冬休みなどの映画シーズンが近づくと、にわかに「良い子」を演じたものだ。
劇場版『仮面ライダー』といってもいろいろで、冬休み恒例の「MOVIE大戦シリーズ」のように、劇場公開時にテレビで放映中の「現役」ライダーと前作のライダーがタッグを組んで敵と戦うというパターンのシリーズや、スーパー戦隊ものと仮面ライダーを2本立てで上映する夏休み恒例のシリーズなど、実に多彩な作品が製作されている。
この劇場版『仮面ライダー』で、なぜか時折り、歴史を舞台にするなど時代劇のテイストを盛り込んだ作品が製作されている。
たとえば『仮面ライダー響鬼』を映画化した『劇場版 仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼(せんき)』(2005年9月より東映系で公開)は、戦国時代を舞台としたオリジナル・ストーリー。テレビ版の登場人物と「同じ顔をもつ」戦国時代の人物や仮面ライダーが、生贄(いけにえ)を求めるオロチとの戦いを繰り広げるという設定だった。
平成仮面ライダーの名物プロデューサー、白倉伸一郎氏の発案で時代劇調としたというが、オリジナル登場人物のカブキが「チャンス!」「ジ・エンド」と英語を口にすることで、時代考証などにはこだわらない「ハイパー時代劇」であることを早々に観客に表明している。
※週刊ポスト2014年12月26日号