話題豊富な椋本氏の経歴は華々しく報道されているが、その一方で「ホンダの巧みなイメージ戦略」と斜めに捉える向きもある。
「もともと学歴や年功序列に関係なく、やる気のある社員を抜擢するのがホンダの真骨頂だったが、近年は縦割り主義が横行してそんな雰囲気はなかった。
車開発の拠点である本田技術研究所も大企業病が蔓延し、上司の顔色をうかがいながら仕事をする社員ばかり。椋本氏を前面に出したのは、ホンダらしさを取り戻さなければ未来がないという危機感の表れ」(自動車専門誌記者)
前出の福田氏も、「技術屋に喝を入れるための社内的なショック療法のひとつ」と推察する。
「開発責任者というのはクルマのデザイン設計のみならず、この部品を使うのにいくらかけるかといった予算取りも大事な仕事。それらの仕事は椋本氏のサポート役としてベテラン社員がついていたようなので、裏を返せば彼の抜擢は話題づくりの要素があったと思います。
ただ、せっかく“金の卵”をデビューさせたのだから、今後の成長は見守るべきです。20年後に社長になる逸材かもしれませんしね。ホンダには出る杭は打たれるとばかりに若き逸材の足を引っ張り合う社風もありますが、椋本氏はそんな逆風にも耐えて将来、経営の中枢を担う人材になってほしいと思います」(福田氏)
4月1日より軽自動車税が増税され、好調な軽市場の落ち込みは避けられない。ホンダはS660でいかに新しい需要を掴み、社内風土の改革にまでつなげることができるか。