ビジネス

キリン「低アル飲料」開発に3人の女性 心を酔わす戦略とは

キリン「バタフライ」開発を託された3人の若き女性開発陣

 花見シーズンも佳境を迎えて今年もあちこちで宴会が催されているが、賑やかな乾杯の光景をのぞいてみると、一昔前と大きく変わったことがある。高らかに掲げられたお酒はビールだけでなく、缶チューハイやカクテル、ハイボールなどさまざまな酒類の銘柄が見てとれる。

 こうしたビール以外の低アルコール飲料はRTD(Ready to drink=手軽にすぐ飲める)と呼ばれ、若者のビール離れが叫ばれる中、市場は年々拡大している。

 国税庁が発表している酒類課税数量販売の内訳を辿ると、その傾向は顕著だ。1990年前後はビールが全体の7割以上を占めていたが、現在は3割程度。代わってリキュールや、その他の醸造酒等(第3のビール)が伸びている。

「今の若者にとって魅力的なお酒は、昔ながらのビールよりもむしろチューハイやカクテルといった甘さやフレーバーが感じられるもの。しかも、スマホの普及や趣味・娯楽が多様化して毎日が忙しいため、アルコール度数の低いお酒を少量だけ飲めれば十分で、あまり酔いたくないという人が増えました」

 こう話すのは、キリンビールのマーケティング部商品開発研究所で中味開発をしている茶木香保里さん(31歳/1ページ写真中央)。同社の調査でも毎年20代男女に「最も好きなお酒」を聞いているが、チューハイやカクテルと答えた割合は2007年に11%だったものが2014年には18%まで増加したという。

 キリンビールのRTD商品には『氷結』や『本搾り』、最近では『ビターズ』など主軸ブランドが揃ってきたが、さらに飲みやすく若者に新しい価値を訴求できる商品は作れないかと、実は2010年から試行錯誤が続けられていた。

 その開発メンバーに抜擢されたのが前出の茶木さんを含め、計3人の女性部員たちである。

「最初は若者向けのビール開発からスタートしたのですが、いろんなフレーバーでもっと手に取りやすいお酒にしようと考え、RTD開発にシフトしました。アルコール度数も3%に抑えて飲みやすさを重視する予定でしたが、すでに市場ができあがっていて新しさがない。そこで最終的に1%にしようということになりました」(同研究所・中味開発グループの日下部真理さん・34歳/1ページ写真右)

 2010年といえば、前年に『-196℃』や『カロリ。』などのブランドを持つサントリーが3%の低アルコール飲料『ほろよい』を発売し、キリンビールのRTD商品を脅かしていた。ライバルがひしめくカテゴリーでガチンコ勝負するには、とにかくインパクトのある魅力を示す必要があった。その答えが「1%」だったのである。

関連記事

トピックス

亡くなったことがわかったシャニさん(本人のSNSより)
《ボーイフレンドも毒牙に…》ハマスに半裸で連行された22歳女性の死亡が確認「男女見境ない」暴力の地獄絵図
NEWSポストセブン
長男・正吾の応援に来た清原和博氏
清原和博氏、慶大野球部の長男をネット裏で応援でも“ファン対応なし” 息子にとって雑音にならないように…の親心か
週刊ポスト
殺害された谷名さんの息子Aさん
【青森密閉殺人】手足縛りプラスチック容器に閉じ込め生きたまま放置…被害者息子が声を絞り出す監禁の瞬間「シングルで育ててくれた大切な父でした」
NEWSポストセブン
竹内涼真と
「めちゃくちゃつまんない」「10万円払わせた」エスカレートする私生活暴露に竹内涼真が戦々恐々か 妹・たけうちほのかがバラエティーで活躍中
女性セブン
史上最速Vを決めた大の里(時事通信フォト)
史上最速V・大の里に問われる真価 日体大OBに囲まれた二所ノ関部屋で実力を伸ばすも、大先輩・中村親方が独立後“重し”が消えた時にどうなるか
NEWSポストセブン
2050年には海洋プラスチックごみが魚の量を上回ると予測されている(写真/PIXTA)
「マイクロプラスチックが心臓発作や脳卒中の原因になりうる」との論文発表 粒子そのものが健康を害する可能性
女性セブン
攻撃面では試行錯誤が続く今年の巨人(阿部慎之助・監督)
広岡達朗氏が不振の巨人打線に喝「三振しても威張って戻ってくるようなのが4番を打っている」 阿部監督の采配は評価するも起用法には苦言
週刊ポスト
大谷が購入した豪邸(ロサンゼルス・タイムス電子版より)
大谷翔平がロスに12億円豪邸を購入、25億円別荘に続く大きな買い物も「意外と堅実」「家族思い」と好感度アップ 水原騒動後の“変化”も影響
NEWSポストセブン
杉咲花
【全文公開】杉咲花、『アンメット』で共演中の若葉竜也と熱愛 自宅から“時差出勤”、現場以外で会っていることは「公然の秘密」
女性セブン
被害者の渡邉華蓮さん
【関西外大女子大生刺殺】お嬢様学校に通った被害者「目が大きくてめんこい子」「成績は常にクラス1位か2位」突然の訃報に悲しみ広がる地元
NEWSポストセブン
京急蒲田駅が「京急蒲タコハイ駅」に
『京急蒲タコハイ駅』にNPO法人が「公共性を完全に無視」と抗議 サントリーは「真摯に受け止め対応」と装飾撤去を認めて駅広告を縮小
NEWSポストセブン
阿部慎之助・監督は原辰徳・前監督と何が違う?(右写真=時事通信フォト)
広岡達朗氏が巨人・阿部監督にエール「まだ1年坊主だが、原よりは数段いいよ」 正捕手復帰の小林誠司について「もっと上手に教えたらもっと結果が出る」
週刊ポスト