当たり前の話やけど、誰かがお米を作ってくれて、それを誰かが運んでくれるから、毎日お米が食えるわけです。
逆に、人が困窮したときに最初にカットされるのがテレビなんかの娯楽の部分であり、衣食住あっての娯楽なはずなのに、いまは価値観が逆転しはじめている。
いまの若い子たちは、芸人にしてもアイドルにしてもプロ野球選手にしても、ごく一部の成功者に憧れて、「夢を追うのはカッコイイ」ってなってる気がする。
けど、ちょっと待ってほしい。夢を追って成功した人は確かにカッコイイかもしれんけど、夢は追ってるだけではカッコイイにはならん。夢を追って、結果貧乏になることはめちゃくちゃカッコ悪いし、ほとんどの人はそのカッコ悪いことになるってことを、誰かがはっきり言わないといけない。僕だって周りにさんざん迷惑かけたし、テレビに出れるようになったのだって、たまたま周りに恵まれて、運が良かっただけですから。
テレビに出るような不安定で生産性のない仕事より、安定してお金がもらえて、何かを生み出して社会に貢献することのすばらしさを唱える大人が増えてほしい。子供たちには、熟練の伝統工芸職人のVTRとか、糖度の高いトマトを作ってる人のVTRとかを観せてほしい。
いま恐れているのは、このままだと孫の孫の孫世代くらいには高校も出ずに芸能界に憧れる若者が日本全体の半分くらいになって、アルバイトばかりで正社員がいなくなり、労働力がなくなって、それで移民が増えてどこ行っても外国人が働いていて日本人が貧乏ってことになるんじゃないかと。これ以上芸人に憧れる若者が増えると、いつか日本は滅びますよ(笑)。
※SAPIO2015年6月号