「糖尿病の増加で問題なのが、糖尿病性網膜症です。糖尿病発症後10年で、I型は100%、II型でも60%で網膜症になります。初期は網膜の毛細血管から血液成分や脂肪が滲み出し、白斑(はくはん)などが沈着しますが、徐々に出血や血管新生が起こり、次第に硝子体に新生血管が増殖し、硝子体出血や網膜剥離(はくり)の原因となります」(島田宏之教授)
この病気は、物を見る中心の黄斑部が障害されていないと本人はあまり気付かない。治療は特殊なコンタクトレンズを付け、黄斑部を避けてレーザーを照射する。
重症例には、眼の中に特殊な器具を挿入し、出血部分を切除して吸い取る低侵襲(ていしんしゅう)の治療が行なわれている。顕微鏡を用いて眼球に3か所、0.4ミリないし0.5ミリの細い器具を刺して治療を実施する。多くが60分以内で治療が終了し、傷が小さいので縫合の必要がなく、傷は自然に閉じてしまう。
糖尿病性網膜症は、新生血管や出血部が増殖することで網膜剥離のリスクが高くなる。糖尿病と診断されたら、視野の障害などの症状がなくても眼科診療が欠かせない。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2015年5月22日号