不動産だけではありません。ロンドンの物価は日本の1.5~2倍が当たり前。たとえばロンドンでは日本のとんこつラーメンブームが起こっていますが、ラーメン1杯の値段は約2000円にも上ります。他にも、英国人が好むフィッシュ&チップスは12ポンド(約2160円)など、ちょっとお腹を満たそうとしたら軽く2000円はかかってしまうのです。
これはドイツのフランクフルトでも似たような状況でした。それほど物価が上昇しているのに、収入はさほど上がっていないため、「インフレで生活が本当に苦しい」という声が口々に聞かれました。
なぜこんなことになっているのか。それは世界各国が借金を抱えていることが原因のひとつです。物価が下落して貨幣価値が高まるデフレになると、政府の借金は実質的に膨らんでいく。だからインフレにすることで債務の価値を減らそうとする。さらに、債務自体を減らすために消費増税が実施されれば、庶民の負担増にますます拍車がかかります。実際、欧州の主要国は1990年代後半から消費税(付加価値税)を引き上げ、英国は20%、ドイツは19%などと高い税率になっています。
これはなにも遠い国の話ではありません。日本では長引くデフレからの脱却を合い言葉に、国を挙げてインフレ政策を推し進めています。それが奏功するかはわかりませんが、いともたやすく世界基準の波が国境を超えてくる現状を目の当たりにすると、日本にも近い将来、インフレ社会が到来するのではないか。そう思えてなりません。
※マネーポスト2015年夏号