国際情報

習近平主席 盧溝橋戦勝式典不参加は安倍談話へのシグナルか

中国人民抗日戦争記念館での特別展

 北京市中心部から南西に車で1時間ほどにある盧溝橋。いまから78年前の1937年7月7日夜、この地で演習中だった日本軍の後方から数発の銃声が響いたことが引き金となり、日中戦争に突入した。それから78年後の7月7日、盧溝橋に隣接する中国人民抗日戦争記念館に習近平主席ら7人の中国共産党最高指導部が現地に勢ぞろいし、戦勝70周年を記念して開かれている特別展を視察した。この展示とその思惑について、現地を訪ねたジャーナリストの相馬勝氏が報告する。

 * * *
 展示会場は主に時系列順に8部構成で、戦争の発端となった盧溝橋事件など東北部の戦闘を描いた第1部から中国全土に拡大した戦争の概略を第2部に、第7部が「偉大なる勝利」、第8部が「歴史の銘記」などとなっている。

 この特別展で最も力点が置かれているのは最後の第8部「歴史の銘記」のコーナーだ。これは毛沢東、トウ小平、江沢民、胡錦濤、習近平という歴代の最高指導者が戦後の日中関係改善のために、いかに尽力したかが大きなテーマとなっている。毛沢東は日中国交正常化を成し遂げ、トウ小平は改革・開放路線を推進し日本企業の対中進出を促進したが、5人の最高指導者の中で最も大きく扱われているのが習近平である。

 習近平の思惑について、オーストラリア・シドニー大学中国研究センター所長のケリー・ブラウン教授はフランス通信(AFP)に対して、中国が「国民との結束とつながり」を実現するために「屈辱の歴史」を利用していると指摘。「強国としての地位を取り戻し、世界中で尊敬され、高い評価を受けることのできる国家」を目指すという「中国の夢」構想を掲げる習近平にとって、「歴史を利用することは特に重要だ」と分析する。

 この言葉通り、中国では今、日本による侵略を描いた映画や舞台が数多く用意されており、少なくとも183回の舞台公演のほか、新作映画10本、テレビドラマ12本、ドキュメンタリー20作品、アニメ番組3シリーズなどを全国ネットで放送。さらに、日本人戦犯の取り調べ調書の中国語翻訳本が100冊以上出版される予定だ。

 とはいえ、習近平は特別展を視察したが、昨年のように記念式典には出席せず、その代わりに宣伝・イデオロギー担当の劉雲山・政治局常務委員が演説を行った。

 北京の外交筋は「特別展の視察や談話の発表は国内向けだが、式典を欠席したことは日本への配慮といえる。日本側を刺激することを避けた可能性もある。これは安倍首相が8月に発表する戦後70年談話の内容について、中国側の意向を汲み取ってもらいたいとのシグナルとも読み取れよう」と指摘する。

関連キーワード

関連記事

トピックス

創価学会の「自民党離れ」は今年4月の衆院島根1区補選でも
【自公連立終焉へ】公明党の支持母体・創価学会の「自民党離れ」が進む 岸田首相の「解散やるやる詐欺」に翻弄され“選挙協力”は風前の灯火
週刊ポスト
殺人を犯すようには見えなかったという十枝内容疑者(Facebookより)
【青森密閉殺人】「俺の人生は終わった」残忍な犯行後にキャバクラに来店した主犯格の社長、女性キャストが感じた恐怖「怒ったり、喜んだり感情の起伏が…」近所で除雪手伝いの裏の顔
NEWSポストセブン
亡くなったことがわかったシャニさん(本人のSNSより)
《ボーイフレンドも毒牙に…》ハマスに半裸で連行された22歳女性の死亡が確認「男女見境ない」暴力の地獄絵図
NEWSポストセブン
長男・正吾の応援に来た清原和博氏
清原和博氏、慶大野球部の長男をネット裏で応援でも“ファン対応なし” 息子にとって雑音にならないように…の親心か
週刊ポスト
殺害された谷名さんの息子Aさん
【青森密閉殺人】手足縛りプラスチック容器に閉じ込め生きたまま放置…被害者息子が声を絞り出す監禁の瞬間「シングルで育ててくれた大切な父でした」
NEWSポストセブン
竹内涼真と
「めちゃくちゃつまんない」「10万円払わせた」エスカレートする私生活暴露に竹内涼真が戦々恐々か 妹・たけうちほのかがバラエティーで活躍中
女性セブン
史上最速Vを決めた大の里(時事通信フォト)
史上最速V・大の里に問われる真価 日体大OBに囲まれた二所ノ関部屋で実力を伸ばすも、大先輩・中村親方が独立後“重し”が消えた時にどうなるか
NEWSポストセブン
大谷が購入した豪邸(ロサンゼルス・タイムス電子版より)
大谷翔平がロスに12億円豪邸を購入、25億円別荘に続く大きな買い物も「意外と堅実」「家族思い」と好感度アップ 水原騒動後の“変化”も影響
NEWSポストセブン
被害者の渡邉華蓮さん
【関西外大女子大生刺殺】お嬢様学校に通った被害者「目が大きくてめんこい子」「成績は常にクラス1位か2位」突然の訃報に悲しみ広がる地元
NEWSポストセブン
杉咲花
【全文公開】杉咲花、『アンメット』で共演中の若葉竜也と熱愛 自宅から“時差出勤”、現場以外で会っていることは「公然の秘密」
女性セブン
京急蒲田駅が「京急蒲タコハイ駅」に
『京急蒲タコハイ駅』にNPO法人が「公共性を完全に無視」と抗議 サントリーは「真摯に受け止め対応」と装飾撤去を認めて駅広告を縮小
NEWSポストセブン
阿部慎之助・監督は原辰徳・前監督と何が違う?(右写真=時事通信フォト)
広岡達朗氏が巨人・阿部監督にエール「まだ1年坊主だが、原よりは数段いいよ」 正捕手復帰の小林誠司について「もっと上手に教えたらもっと結果が出る」
週刊ポスト