杜撰な基礎工事で傾いたマンションを巡り、建て替え協議に発展している横浜市都筑区の「パークシティLaLa横浜」。現在、傾いた西棟では、建物の強度を保てなくなる“杭打ち不足”が発覚した8本以外にも施工不良がなかったか、地盤調査が行われている。
そして、地盤調査とともに詳しい原因究明が待たれているのが、杭打ちを請け負った旭化成建材の「1担当者」による虚偽データの全容だ。
10月16日に同社の前田富弘社長は記者団に対し、
〈(強度データの)改ざんはミスではなく、弊社の施工管理者一人が悪意を持って意図的に隠そうとしたと見ている。その責任者に27時間の聞き取り調査を行ったところ、(強度データを記録する)機器のスイッチを入れ忘れたり、水で紙がにじんで数字が見えなかったりするなどの状況があった〉
と明言した。そして、最終的に元請けゼネコン(三井住友建設)に提出するデータの書き換えや流用が常態化していたとみられる。この担当者はキャリア15年以上の杭打ち管理のベテランで、旭化成建材内では正社員ではなく、何らかの出向契約を結んでいたとの報道もある。
事態は2005年に発覚し、世間を賑わせた耐震偽装問題の「姉歯事件」を彷彿される“犯人追及”へと進んでいきそうな気配だが、いわば責任転嫁の方向性に警鐘を鳴らすのは、住宅ジャーナリストの山下和之氏だ。
「これまで強度データをろくに精査もせず、外注から上がってきた報告書をパラパラめくって確認するだけのチェック体制だったとしたら、会社の責任は免れません。にもかかわらず、特定の担当者がスケープゴートにされて、業界の仕組みそのものがうやむやのままになれば、また同じような事件は必ず起きるでしょう」
旭化成建材の前田社長は、「管理体制が非常に不備で、責任を痛感している」と述べ、建物の調査・補修費用については全額負担する方針だが、「カネは出すが、道義的責任は担当者に負わせて一刻も早く幕引きしたいのが本音」(大手ゼネコン関係者)と厳しい指摘も出ている。