9月半ばに電卓商品としては珍しく販売告知のプレスリリースを出したところ、電気量販店などに予約注文が入り出した。また同社のコールセンターにも「どこで買えるのか」という問い合わせの電話が多数きているという。電卓の予約注文は同社の50年にわたる販売経験のなかでも「記憶に無い」という。上々の滑り出しといえるだろう。
大平さんは電卓回路の設計者として入社し、電子辞書の開発に関わった時期を除いて、会社員人生の半分以上を電卓に捧げている。個人所有している電卓は10数台、同社の名機といわれる「カシオミニ」の中古をネットのオーションサイトで見つけ、落札したこともある。
「一家に一台カシオミニから始まり、電卓は一般家庭でも所有されるようになり、かなり身近な存在になってきました。しかし一方で、私は電卓が100円ショップで売られるのはゆゆしき問題だとも考えています。私は電卓の社会的地位をもっと向上させたいんですよ」
電卓の社会的地位ィィ!の向上ゥゥ! そんなこと考えたこともなかった! 「こんなに電卓について熱く語る人に人生で初めて会いました」と私が驚くと、そばにいたカシオの広報の人も間髪入れずに「私も初めてです」と頷いた。
こんなに愛情たっぷり注がれて、S100は幸せな商品だと思う。さすがにまだ社名に「計算機」の看板を掲げているだけのことはある。税込み価格3万円というのは万人に「お一つどうぞ」と気軽にお勧めできるわけではない。だが実機に触れば、「ほう」と声が漏れることは請け合っておこう。