芸能

芸能プロ社長のわいせつ裁判 判決後も少女らの不安消えない

スマホとネットの普及で少女たちの不安は残る

 芸能プロダクション「センディング」の元社長・田代オリバーことベレン・オリバー・オリベッティ被告が少女へのわいせつ行為により児童福祉法違反で逮捕、起訴された事件の判決が1月8日に東京地裁で出された。「懲役2年、執行猶予5年」の厳しい判決が出されたが、この事件の取材を続けてきた『脱法ドラッグの罠』著者で若者の風俗文化に詳しいライターの森鷹久氏によれば、まだ不安がなくならないと訴える女性が何人もいる。

「判決が出た事件の被害少女のほかに、田代被告から金銭や肉体関係を強要された女性がいます。被害に遭った彼女たちは事務所社長の田代に求められたため、わいせつ行為などの撮影や録画をされました。今回の逮捕や裁判、その報道によって苦境に立たされた田代がヤケになり、その写真や動画をネットでバラ撒くかもしれないと『リベンジポルノ』におびえているんです」

 リベンジポルノとは、元交際相手や元配偶者が、自分を拒否した相手への仕返しに裸の写真や動画を本人に無断で公開する行為のこと。日本でも2013年に起きたストーカー殺人事件の際、加害者男性がプライベートな写真や映像をネットで拡散させたことで話題になった。リベンジポルノ防止法が2014年11月に施行されたが、いったん公開され拡散された写真や動画を完全に消去するのが事実上、不可能な状態は今も変わらない。

 金銭や肉体関係を強要された女性たちのうち何人かは、田代被告に支払ったコンサルタント料などの金銭を取り戻すべく、弁護士に相談して民事訴訟も視野に入れた行動を始めた。戦う姿勢をとる彼女たちではあるが、「リベンジポルノ」が不安なあまり、目立たないように息をひそめている。

「事件が明るみになったとき、彼を許せないと憤り取材に協力してくれた被害女性の一人は『もし告発者が私だとわかったら写真や動画をネットに出されるかもしれない。それが怖い』とテレビカメラの撮影や具体的な内容の公表を拒みました。本当に怖いのでしょう、その話をしていたときは震えていた。田代被告のもとに写真や動画が残っている限り、彼女たちの恐怖がなくなることはないでしょうね」(前出・森さん)

 リベンジポルノについて包括的な統計はないが、ネットやスマホの普及によって増加傾向にあるといわれている。

 一般社団法人セーファーインターネット協会の活動報告(2013年11月~2015年7月)によれば違法・有害情報は多い順に「わいせつ」(62%)、「児童ポルノ」(30%)、「リベンジポルノ」(5%)で、削除依頼はそれぞれ57.95%、29.08%、10.86%とリベンジポルノの削除依頼が情報数に比べて比率が高く、被害者が必死で削除を求めて行動していることがわかる。なお、この調査にはLINEなどのSNS内部の報告は含まれていない。

 ひとつの事件に判決は出ても、リベンジポルノの恐れがある限り、被害に遭った女性たちにとって事件はまだ終わりそうにない。

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