コラム

森永卓郎氏 TPPスタートで日本社会の「米国化」加速と予測

経済アナリスト・森永卓郎氏

 TPP(環太平洋経済連携協定)の大筋合意を受け、経済アナリストの森永卓郎氏は「日本社会の米国化が加速する」と分析している。それはどういう意味なのか。森永氏が医療分野を例に解説する。

 * * *
 一般的にモノの値段は売り手が決めるものですが、医療用医薬品は特殊で、厚労省が価格を決めています。それを公定薬価といい、厚労省が2年ごとに値下げの方向で見直しを行ない、医療費を抑制してきています。

 だが、製薬会社からすればそれでは収益がズルズル落ちていくことになり、せっかく新薬を開発しても、その費用を回収できない恐れがある。そこで、米国の要求もあり、製薬会社に新薬開発を後押しする政策として、2012年の診療報酬改定時に「新薬創出加算制度」が試験的に導入されました。この制度が適用された新薬については、薬価見直しの適用外として価格が維持されるというものです。

 当初は一時的な措置といわれていましたが、米国はこの制度を「恒久化すべき」と圧力をかけています。さらに、TPPがスタートすれば、米国の製薬会社の新薬を日本の厚労省がすぐに認可しないのは非関税障壁だと主張し出すことは目に見えています。その結果、日本の医療費も米国の水準に近づくように、どんどん上がっていくことが避けられないと考えています。

 このような形で、これから様々な分野でTPPに基づく「ルールの統一」が進んでいくと思われます。しかも、そのルールはTPPを主導する米国のルールに合わせるということに他ならず、日本も米国同様、上流(金持ち)と下流(庶民)で受けられるサービスに大きな差が出る「二極化」がさらに進んでいくことは間違いありません。

 その中での防衛策として、食の安全を求めるなら外食は避け、スーパーなどで原産国表示のある食材を買って来て、自分ですべて調理して食べ、会社へも弁当を持参することです。

 さらに、何より一番の防衛策はお金持ちになることです。そのためには、投資の重要性がこれまで以上に高まるでしょう。

※マネーポスト2016年新春号

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン