――これだけ悪者になっているスギなのに、いまだに植林が行われている理由は。
「スギは昔から造林樹種としていろいろ優れた点(※)があるメインプレーヤーで、手法も確立されている。そのため、森林所有者や林業経営者が選びやすい傾向がある」
※林野庁のHPでは、〈スギ林は木材資源であると同時に、国土の保全や地球温暖化の防止、水源のかん養等の多様な公益的機能を有している〉との記載あり。
――林野庁は2017年度に「花粉症対策苗木」の供給量を1000万本にする目標を掲げているが、現状は程遠い。これだけ多品種が開発されても大量供給できないのはなぜか。
「無花粉・少花粉の品種が出来始めたのはここ数年の話で、種や穂を採る生産施設の整備や拡大にも時間はかかる。爆発的に供給量を増やせるものではない。ただ安倍首相の方針もあり、花粉発生源対策の予算が2015年度の約1億2000万円から2016年度は約4億円と大幅に増額されたので、苗木の受給拡大も加速していくと思う」
――花粉症の症状軽減や撲滅が見込めるのは何年先か。
「たとえ、いま花粉を出すスギをすべて伐採したとしても、すでに花粉症になっている人の症状が完全になくなるか分からないし、スギ以外にもヒノキアレルギーなど他の植物に反応する人もいる。スギの植え替えに何年かかるから花粉症の撲滅が何年後になる――という単純な話ではない。
林野庁としては、引き続き花粉を出すスギは極力使わずに、木材利用の伐採や新しい品種への植え替えなどを推進しながら林業の発展を支援していきたい」
いわば国策として進めてきたスギの植林が深刻な“国民病”をつくってしまった背景もあるだけに、国にはさらに本腰を入れた花粉症対策を望みたいところだ。