ピークは過ぎたといわれながらアイドルブームが続くなか、おじさんによる、おじさんのためのアイドル本『50代からのアイドル入門』(大森望、本の雑誌社)、『中年がアイドルオタクでなぜ悪い』(小島和宏、ワニブックス)が相次いで出版された。アイドルではなくファン、しかもおじさんに焦点を当てた書籍出版が続く背景を探った。
WEB本の雑誌で連載した同名コラムに加筆修正した『50代からのアイドル入門』は、アイドルのイベントやコンサートへ行ったことがない人へ向けて書かれた“現場”入門書。テレビやネット等のみで楽しむ“在宅”アイドルファンは潜在的にかなりの数にのぼる。サイレントマジョリティである彼らへ向け、コンサートやイベントなどの現場へ出るプロセスを具体的に解説したのが『50代の~』だ。もちろん30代でも40代でも適用可能な内容だ。
在宅ファンへコンサートやイベントを楽しもうと呼びかける内容になったのは、大森さん自身が現場へ出るようになり、在宅のときより、さらに生活にハリが出て豊かになったと感じているからだ。
「仕事を始めて20年も経つと、いろいろ工夫しても生活がマンネリ化します。でも、アイドルを応援し始めると、新しいことに取り組む楽しさやアイドルから『ありがとう』と感謝されることで社会の役に立っているという満足感も得られる。大人になると新たな交友関係が生まれづらいが、アイドルファンになったおかげでSNSでのつぶやき、チケットや情報交換をきっかけに新しい交友関係も広がりやすくなりました。
アイドルファンは、まだ誰にでも気兼ねなく告白できる趣味になっていません。でも、子どもの頃からアイドルがいる社会で育った世代にとっては、大人になっても歌って踊る女の子を応援することが趣味のひとつとして存在している。興味があるのにあと一歩を踏み出せない多くの人たちへ向けて、現場に出る楽しさと方法が伝わればと思います」
大森さんは書籍のなかで、まず無料イベントやチケットが入手しやすいコンサートへ足を運び、自分の好みに合った楽しみ方と出会うことからすすめている。