任天堂が据え置き型ゲーム機「Wii U」の生産を年内で終了させる──3月23日、日本経済新聞がこう報じたことで、多くのユーザーやゲームファンに動揺が走った。
確かにWii Uは累計販売台数1億台を超えた旧モデルの「Wii」に比べれば1300万台弱と振るわないが、2012年末の発売から3年あまりしか経っていないハード機。最近Wii Uを購入したユーザーから、「ハードを作らなくなれば、対応する新作ソフトも少なくなるのでは?」と心配の声が挙がるのも当然だろう。
任天堂は日経の報道に対して公式コメントこそ出していないが、一部専門メディアには〈来期以降も生産は継続して行う予定だ〉と否定している。なぜこのような“誤解”が生じてしまったのか。エース経済研究所アナリストの安田秀樹氏がいう。
「もともとWii Uの年間販売計画は340万台と控えめだったところに、昨年末から今年にかけて『Splatoon(スプラトゥーン)』や『スーパーマリオメーカー』といったソフトが任天堂の想定を超えるミリオンヒットとなったため、Wii Uが深刻な品薄に陥ってしまったのです。
もちろん任天堂も増産に向けた対応はしているようですが、在庫を切らした半導体部品の供給が追い付かず、ハード機が市場に出回らない状態は続いています。そうした背景が生産終了の報道につながったのかもしれません」
だが、その一方で「時期は未定だが、Wiiビジネスは早晩、収束させる予定だった」(業界関係者)との観測が広がっていたのも事実。その根拠になっているのが、今年中に発表予定の新型ゲーム機「NX」の存在だ。
「NXはおそらく6月に米国で開催されるE3(世界最大のコンピューターゲーム関連の見本市)に合わせてお披露目されることになるだろう。
任天堂としてはこれまでWii Uや携帯ゲーム機『ニンテンドー3DS』にかけていた開発費や人的資源をNXに傾けて、一気に販売スピードを上げる体制を整えている。裏を返せば、NXが確実に売れる自信を持っているからこそ、Wii Uの生産終了も視野に入れている――との見方はできる」(前出・業界関係者)