しまむらのブレない低価格戦略が再評価
そもそもユニクロが安売りを武器にしなくなったのは、いまに始まったわけではない。2004年9月には〈ユニクロは、低価格をやめます〉という衝撃的なキャッチコピーを新聞の全面広告に掲載し、度胆を抜いた。
「ファストリの柳井正氏(会長兼社長)は、このころから『ユニクロは単なる安物衣料と思っている人が多い。低価格だから売れたというのであれば将来性はまったくない』と脱・低価格宣言を掲げ、徐々に反映させていきました。
かつて1900~2900円だったジーンズがいまでは3990円が中心価格帯であるのも一例です。柳井氏は単に値上げをしてきたわけではなく、ベーシックな売れ筋商品でも品質や機能性、デザインの向上といった“付加価値”をつけてブランド力を高めていったのです」(月泉氏)
だが、そんなユニクロの先進性と消費者の本音が少しずつ乖離してきているのではないか――と月泉氏は分析する。
「例えば、従来の『ヒートテック』より数倍も保温性が高いインナーが登場したからといって、値段が高ければ〈昔に買ったヒートテックで十分〉と思う消費者は多いはず。
そうなると、ユニクロも安さを期待される原点に戻る必要がありますが、ただ安いだけの“先祖返り”では意味がありません。それこそヒートテックやウルトラライトダウンを他社に先駆けて発売したようなメガヒット商品を出さなければ、他の衣料チェーンにお客さんを奪われてしまうでしょう」
カジュアル衣料チェーンは、しまむら以外にも「ライトオン」や「マックハウス」など国内チェーンの復権、そして「H&M」、「ZARA」、「フォーエバー21」といった外資系ファストファッションの出店拡大も続いている。
果たしてユニクロはどこまで“価格”と“品質”のバランスを追求し、これらライバルたちの猛追をかわしていくのだろうか。