モテ車を解説する「週刊ポスト」連載の「死ぬまで カーマニア宣言!」。これまでにクルマを40台買ってきたフリーライター・清水草一氏(54)が、いまや年間販売台数で世界10位、国内でも第3位のスズキの普通車について解説する。
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ご同輩諸君。スズキと聞いて思い浮かべるのは、まず軽自動車だろう。1979年の「アルト47万円」以来、スズキは常に軽自動車業界をけん引してきた。
しかしスズキにはもうひとつの顔がある。インドを始めとする海外市場における、グローバル・メーカーとしての顔だ。
年間販売台数は世界第10位。世界のビッグ10である。実は国内でもトヨタ、ホンダに次いで第3位。日産より上だ。鈴木修会長は、かつて「ウチは中小企業」を口癖としていたが、そんなのは大ウソなのである。
スズキの世界年間販売台数は約300万台に達する。そのうち軽自動車は約60万台。軽は日本国内専用で、海外では1台も売られていない。つまりスズキ車の8割は普通車というのが現実だ。
日本では、スズキの普通車はややマイナーな存在だが、実はこれが非常にレベルが高い。かつてスズキの海外市場での地位は、日系自動車メーカーの中で最も下の方で、韓国車や東欧車に近い「安物の小型車」と捉えられていたが、現在は完全に「高品質な小型車」である。
スズキの普通車が大きく変身したのは、2004年に発売された2代目スイフトからだ。初代スイフトは一部軽自動車の部品を流用していたが、2代目はすべてを刷新。走りやデザインなど、すべてがワールドクラスに生まれ変わっていた。初めて乗った時、我々はこれを「オペル(当時スズキの親会社だった米GMのドイツ子会社)の技術に違いない」と誤解したが、実はまったくの自社開発だったのである。