練馬区で「つつみ眼科クリニック」を開業している優秀な女性だ。アポを取って訪ねたのは先週の水曜日だった。
まずは眼のチェックを入念にしてもらった。
「きれいにレンズは入っています。表面に傷もないですね」
そう言われただけで、ほっと肩の力が抜ける。眼底検査、視力の測定をし、モニターで手術後の眼を見せてもらった。
堤先生によると「遠くが〇・六、七で、近くがぐっと見えると患者さまは思われるかもしれませんが、それはちょっと違います」。
私が手術をする前にクリニックに頼んだのは、すごく遠くまで見えなくても良いので、スーパーで品物の値札が読めるくらいにして下さいということだった。
だが、なかなかそうはうまくいかないらしい。老眼年齢の私は、値札が見えるようにまである程度見えるようにすると、遠くはずいぶん見えなくなる。おそらく〇・一から〇・二くらいしか見えないらしい。だから患者の期待と現実の間にギャップが出来る。
私の場合もまさにそうだった。ずっと近眼だったので遠くは〇・一くらいしか見えないが、近くのものは裸眼でしっかり見える状態に慣れていた。ところが術後は眼鏡をかけなければ何も見えない。その変化に、まずはうろたえた。
飛蚊症に関しては、白内障の手術をしたら、レンズが透明なものに代わったので、光が奥まで入るようになって、奥にあるゴミがよく見える。したがって蚊が飛ぶのはしょうがないことらしい。
眼のゴロゴロ感は、やはり手術で切っているので感じるのは当然だし、しょぼしょぼするのはドライアイのためもあるという。
たしかに、その後、両眼尻の端に細い紙をぶらさげて五分間じっと待つ検査(シルマーテスト)をしてもらったら、私の涙の量は普通の人よりずっと少なくて、まぎれもなくドライアイだった。
「今の時代はすごく眼が乾く環境にあるので、白内障手術を契機にドライアイがわかる方が多いです」
私は多くの時間をパソコンと向き合っている。若い人ほどではないがスマホを見る時間も長い。ドライアイが、実はしょぼしょぼの原因だったかと、ようやく合点がいった。
実際、堤先生の眼科でドライアイ用の目薬を出してもらって定期的に両眼にさしていたら、症状はずっと軽減した。なにより理由がわかったために安心して仕事を始められて、原稿を書く効率も上がった。
つまりは、人間の身体の不調というのは、その原因がわからないときが最も不幸なのだろう。現状をきちんと把握して、治療方法を示してもらえたら、それだけで、もう半分以上の辛さは消えてしまう。
※女性セブン2016年5月5日号