オレオレ詐欺は中国や台湾でも社会問題に(写真:アフロ)
グローバル化が叫ばれる時代、犯罪にも国境はなくなりつつあるのかもしれない。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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中国と台湾が「海峡両岸共同打撃犯罪及び互助協議」を締結して七周年を迎える4月26日、台湾の司法部門を代表する訪問団が北京を訪れた。「海峡両岸共同打撃犯罪及び互助協議」は、中台に跨がる詐欺や麻薬、密輸など犯罪に対し、両岸が協力して解決に当たることを目的としたものだが、中台に跨って起きる犯罪では、目下、最大の関心事となっているのがオレオレ詐欺である。
台湾海峡を挟んで発生したオレオレ詐欺では、現在の経済状況を反映してか、台湾の犯罪グループが大陸の人々を騙すという構図になっているのだが、その犯罪の最大の特徴はワールドワイドであるという点だ。
というのも今回、台湾から司法部門の代表団が北京を訪れた目的の一つが、北京の拘置所に入れられている45人の容疑者と面会するためであったからであり、その45人はすべてケニアで逮捕され、中国に移送されてきたからである。つまり、オレオレ詐欺の加害者たちは、みなケニアから中国に国際電話でオレオレ詐欺を仕掛けていたのである。
類似の事件は、この少し前にも発生していて、そのときは電話の発信元はマレーシアであった。また、4月には貴州省に潜伏していた台湾の犯罪グループが新たに摘発されているのだ。
日本で起きるオレオレ詐欺のなかには、中国に犯罪グループの拠点があり、そこから電話で相手を騙したケースが増えた時期もあったが、いまではその中国がターゲットになり、しかも詐欺グループの拠点が、中国から遠く離れたアフリカにあるという。犯罪の日進月歩には脅かされる。