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『重版出来!』最初の重版は5日目だった 担当編集者が述懐

重版はロマンだ(写真:アフロ)

 ドラマ『重版出来!』(TBS系火曜10時)が人気だ。漫画編集部を舞台に漫画家、編集者らが創作にかける人間模様はただの内輪話ではなく、全ての働く人に訴えるものがある。「重版」について、フリーライターの神田憲行氏が3人の編集者に取材した。

 * * *
「重版」とは一度販売された書籍が再度印刷出版されることをいう。重版のたびごとに2刷、3刷などと呼ぶ。もちろんそれは本が売れた証であり、作っている側が小躍りする出来事だ。

 ではドラマの原作漫画『重版出来!』の「重版」はどうだったのか。連載時から担当編集者を務めるビッグコミックスピリッツ編集部の山内菜緒子さんはこう語る。

「『重版出来!』第1巻の重版は発売から5日目で決まりました。すぐ作者の松田奈緒子先生に連絡の電話を入れ、先生から『「ありがとうございます』とお返事いただき、私も『こちらこそ、面白い漫画を描いてくださってありがとうございます』とお礼申し上げたことを覚えています。また販売担当者と宣伝担当者とも喜びを分かち合いました。重版とはその本に関わる全ての人間のアドレナリンが出るくらいのことなんです」

 もっともそんなに早く重版が掛かることは予想していなかったらしく、作者の松田さんは「1年以内に重版出来すればいいなぁ」と考え、山内さんは「この書名で重版しなかったらシャレにならない」と胃に穴が空きそうだったとか。あんな面白い漫画、重版しないわけがないと読者は思うのだが、作っている側はいつも不安なのである。

「松田先生は『仕事をする上で悪人も脇役もいないし、皆それぞれに哲学がある』という軸を持ってらっしゃいます。だからチームで働くことの醍醐味と同時に、主人公に限らずどのキャラクターも深く描かれる。そこに読んでいる人は自分と近いキャラクターを見て、感情移入するのだと思います」(山内さん)

 ミリオンセラーの重版では、編集者はどんな感慨を持つのか。

 フリー編集者の島本脩二さんは、小学館の編集者時代に「成りあがり」と「日本国憲法」という2つのミリオンを担当した経験を持つ。

 「成りあがり」は矢沢永吉の自叙伝で、1978年に出版し、角川文庫版と合わせて100万部になる。「日本国憲法」は写真と憲法の条文を組み合わせただけのシンプルな構成だが、1982年に発売されてソフトカバー版合わせて42刷、113万部を越えて今も売れている。

「『成りあがり』は自分が30歳のときに初めて作った単行本で、『日本国憲法』は月刊の絵本雑誌にいたときに、時間に余裕があったので企画した本です」

 と島本さん。

「最初の重版はそりゃあ嬉しいですよ。初版だけで終わると利益トントンだけど、重版はそれだけ儲かるわけですから。でも毎週重版の連絡が来て、それが2カ月、3カ月と続くわけじゃない? 正直、最初の感動は薄れるよね(笑)。15刷くらいから何回刷ったか覚えていられないし、そのころには別の本作りに夢中になってますから」

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