脳梗塞や脳出血、心筋梗塞といった死に至る病の要因となる高血圧とは、「血圧が持続的に上昇した状態」のこと。血中塩分濃度が上がると、それを正常値に保とうと血液量が増えるため、血液を全身に送り出すポンプである心臓に大きな負担がかかってしまう。つまり、塩分摂取量が多いと高血圧になりやすいというわけだ。それはある意味、長年の食生活の結果である。血圧の専門医である渡辺尚彦さんはこう説明する。
「高血圧は、長年の生活習慣の蓄積の結果でもあるため、まだあまり血圧が高くない若い人は、塩分を減らす必要性を感じにくい。濃厚なラーメンや外食を食べ歩きするなど、塩分摂取量に無頓着になりがちです。しかし、塩分の摂りすぎは、着実に体内の血管や内臓にダメージを蓄積するので、若いうちからうす味に慣れておいたほうがいいでしょう」(渡辺さん)
もともと海にいた生物が陸上に上がり直立歩行するようになったのが人間。そのため、直立姿勢で脳に血液を送るためには、ある程度の圧力が必要で、その血圧を保つのに塩が不可欠といわれている。
「塩化ナトリウムに含まれるナトリウムは、細胞外液(体液)の中に存在し、濃度を一定に保つ働きがあるのは事実。しかし、世界には塩が手に入らない地域もあり、アマゾンの先住民ヤノマミ族は調味料としての塩を持たず、食物から摂取する塩分摂取量は1日わずか0.08gしかありません。わざわざ塩を摂らなくても人が生きられることを実証しています」(渡辺さん)
また、先進国の中でも減塩先進国のイギリスでは、加工食品の減塩政策が進み、2025年には1日の塩分摂取量目標を3gに引き下げると発表。このことからも、人に多くの塩は必要ないことがわかる。
「塩分は1日3g程度で充分。日本には“敵に塩を送る”という言葉があるからか、塩をとても大切にしてきました。それにより、塩分を摂りすぎる一面もあるので、減塩を強く意識すべきです」(渡辺さん)
※女性セブン2016年6月9・16日号