厚生労働省の発表によると、世帯平均年収は約550万円なのに対し、東京大学が在校生に実施した2012年の調査では、東大生の世帯年収は950万円以上の家庭が半数以上との結果が出ている。
やはり東大受験には潤沢な資金が必要で、中学受験をして難関私立に入るか、そうでなければレベルの高い公立の進学校に入って塾通いするしかないのだろうか?
「うちは夫婦とも高卒だし、年収は高くないし、社会的信用はないし、習い事も行かせたことがない。ないないづくしの家庭環境ですが、息子が現役で東大に入りました」
と話すのは碇策行さん(48才)だ。碇さんは関東近郊のキャバクラで店長として働き、アルバイトを合わせても年収300万円ほど。そんな家庭環境の中、碇さんの息子は2013年に、現役で文I (偏差値76)に合格。その時の経験をまとめた本『田舎のキャバクラ店長が息子を東大に入れた。』(プレジデント社)が話題を呼んでいる。
「自分が中学1年の時に両親に棄てられたので、息子のことだけは“絶対に裏切らない”と決めたんです。だから息子が“中学受験をしたい”と言ってきた時も、多額の借金を抱え3つの仕事を掛け持ちしていて金銭的に全く余裕がなかったんですが、ぼくの個人的な理由で子供の学びたい気持ちを断念させることはできなかったので、なんとか工面して行かせました。
その時私立に行くんだから(大学は)東大だぞ! と軽い気持ちで言ったんです。もちろん東大に行かせることが子育ての正解なのかどうかはわかりません。
でも、少なくとも勉強はやっておいた方がいいと、ぼく自身が大人になって痛感したので、学ぶことの楽しさを教えるようには育てました」(碇さん、以下「」内同)
そのため、お金をかけずに小さい頃からいろいろなものに興味関心を持たせるように仕向けていたという。
「例えば車で走っている時看板を見かけたら、息子が読める漢字を読ませるんです。そして“すごいね、じゃあその漢字のほかの読み方もあるけどわかる?”と聞くとか。車のナンバーを見たら“全部数字を足してごらん”とか。生活の中に学問があることを教えていました」
あとは子供を急かさないことを徹底していたという。
「大人のスピードと子供のスピードは違います。子供が黙っている時間は子供なりに考えている。急かしてその時間を断ち切ると、大人が手伝ってくれるのを待つ癖がついて、自分で考えることをしなくなってしまいます」
子供と向き合い、時に“勉強だけできてもダメ”と叱ってきた碇さんだったが、息子の成長ぶりを、意外なところで目の当たりにする。
「二次試験の前日、息子と妻と3人で東京に向かう時のことです。風の強い日で、空き缶が転がってきたんですが、その時息子が空き缶をさっと拾って。緊張状態にあっても人として当たり前のことができるんだ、自分の子育ては間違ってなかったんだと思い涙が出ました。“こんなふうに成長した息子が東大に受からないわけはない”って確信しました」
※女性セブン2016年6月9・16日号