【外出は出発の1時間前から始まる】

 佐藤さんは外出の1時間前と30分前にもアラームをセットする。余裕を持って外に出る準備に専念するためだという。

「本を読んだり、テレビを見たりしていると意識を取られて外出の予定自体を忘れてしまうことがあります。アラームが鳴ったら着替えて、持ち物を点検することに集中するんです」(佐藤氏)

 着ていく服装も前の日のうちに決めておく。朝起きた時、必ず目に入る場所に全身コーディネートをハンガーにかけてから就寝。当日、慌てる原因になりそうなものを極力排除しておく。

「実は佐藤さんも最初は外出に慎重だったんです。それが携帯を使い始め、一歩も二歩も踏み出した。デジタル機器はこれからのシニアの心強い魔法の杖になりうる。楽しみながら取り組むのが成功の秘訣かもしれません」(永田氏)

 A4判のタブレットに視線を落としていた佐藤さんが「はい、出ました!」と見せてくれたのは咲き乱れる藤の花の写真の数々。あしかがフラワーパーク(栃木県)まで友人と足を延ばして撮影したものだ。

「電車を3時間乗り継いで行きました。毎月季節ごとのスポットに行って、フェイスブックにもアップします。〈友達〉は1500人もいて、反応が楽しい」(佐藤氏)

【角を曲がらずに散歩する】

 散歩は毎朝30分、一日7000歩が目標だが、初めての道を歩くと、「来た道を戻る」ことが難しく、道に迷ってしまう。だから、やはり工夫が必要になる。

「昨年6月に引っ越したのですが、まずは家からまっすぐ10分歩いて、Uターンして戻ってくるだけにする。真っ直ぐの道だけなら、道順を覚えなくて済みますから。繰り返して慣れたら次のステップで角を曲がってみる。いきなりはいけません」(佐藤氏)

 携帯電話の歩数計アプリに記録を残しておけば、健康管理につなげられる。

■佐藤雅彦(さとう・まさひこ)/1954年岐阜県生まれ。認知症と診断されてからの自身の体験を綴った前著『認知症になった私が伝えたいこと』は2015年度日本医学ジャーナリスト協会賞優秀賞。「認知症とともに歩む本人の会」代表。

※週刊ポスト2016年6月10日号

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