『ペコロスの母に会いに行く』の著者で、認知症の母を5年間介護して看取った岡野雄一氏は、「親捨て」後の精神面に目を向ける。
「私は介護に悩む人に『プチ親不孝』をすすめています。親を他人に預けて、自分だけ飲みに行ったりする。そんな小さな“親不孝”を定期的にして体も心も親から離れてみれば、介護を長く続けることができます。
でも、これは『親捨て』とは違います。口から食べられず、会話もできなくなった母から私は多くのものをもらいました。望み通りに親が早く死んでくれて『親捨て』が実現しても、親を見捨ててしまったという割り切れない気持ちが絶対に残るはずです」
逆に「親と子は離れて暮らすべき」と、島田氏と意見を同じくするのは、評論家の呉智英氏である。
「一緒に暮らして介護するほうが、大きな軋轢があることが多い。経済的余裕がある人は、むしろいいサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)などに入れて時々会いに行くほうが、いい関係が築けることもあるんです。介護殺人なども、同居によって軋轢が蓄積した結果なのではないか。現実問題として、介護が必要な親が死んだ時に『早く死んでくれてよかった』と家族が本音を漏らすことは多いのです」
※週刊ポスト2016年6月17日号