「学校の成績に一見関係なさそうな、無駄な学びこそ重要」――「京大3兄弟」の長男で学習塾『探究学舎』講師の宝槻泰伸さんはそう言い切ります。
泰伸さんは、『とんでもオヤジの「学び革命」』(小学館)の原案協力者でもあります。同作は、3人の息子を塾も通わせずに京大に進学させた破天荒なオヤジ、翻弄される妻、そして個性豊かな3兄弟を描いた、爆笑あり、感動ありのコミックエッセイ。『女性セブン』の人気連載マンガ『ホーツキさんちのオヤジ』(2015年5月~11月)をまとめた単行本です。
子どもをやる気にさせ、将来、本当に役立つ知識を身につけさせるための、泰伸さんの授業第2回が始まります。今回の質問はこちら。
「小学3 年生の母親です。英語教育はいつから始めたらいいでしょうか? 最近は、幼児から英語を習わせている母親もいると聞いて、あせっています」(40代・主婦)
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子どもが主体的に自ら学び取る教育をアクティブラーニングといいます。その典型的なものが語学教育です。子どもが、母国語とは違う外国語について自ら認識して、誰に何を教えてもらうでもなく、自分で勝手にできるようになっていく。
小さいときほど、語学に対する素養はすごく高いので、幼児向け英会話施設やアメリカンインターナショナルスクールに子どもを入れれば、英語の習得率は高まります。そういう意味で、今回の質問の答えは、今すぐにでも英語教育を始めたほうがいいということになるでしょう。
ただ、これは世間一般的にいわれている答えであって、私の考えとは違います。英語でコミュニケーションすることそのものは、重要ではありません。
では、何が重要なのか?それは、「英語で何を話したいのか」「何を話すか」だと思っています。
対話するためには、教養や人間力、思考力を身につけなければなりません。特に思考力は、ほとんど言葉の力といえます。日本人は、日本語を使って物事を考えます。日本語のレベルが上がれば、思考力が上がります。簡単にいうと、哲学書を読んでおもしろいという感想を持てたら、日本語のレベルは高いわけです。
今の子どもたちは、抽象的思考ができません。抽象的思考とは「正義」など目に見えない概念について考える力です。
例えば、「平和とは何か」というテーマに基づいて議論をしたり、そういう文章を読んだりすることが、それに当てはまります。そうしたことが苦手な子どもが非常に多い。
「ホーツキ家」のオヤジは、3兄弟に思考力をとことん鍛えさせました。例えば、NHK大河ドラマを見せて、見終わった後には必ず感想会をして対話させていました。
18才のときに『自由からの逃走』(エーリッヒ・フロム著)という哲学書をすすめられて読みました。「自由とは何か」について綴られていて、おもしろかったことを覚えています。
表面的な英語スキルを子どもの幼いうちから習熟させようと血眼になるよりも、思考力を日本語できちんと磨いてあげて、それから英語を学べばいい。中高生から英語の勉強を始めても全然遅くないと思っています。それが、今回の質問に対する私の答えです。
英語を話せる、読めるということは、ピアノを弾けることと同じように技術が必要です。モチベーションがなければ、技術を習得できません。なぜなら練習が必要だから。しっかりとしたモチベーションがないと途中でやめてしまいます。
「いつから英語を勉強させたらいいか」ではなくて、「子どもが英語を習得したいというやる気を持つにはどうしたらいいか」を考えてみてください。
※女性セブン2016年7月7日号