話は変わりますが、私もかつて告発されました。やはり「風説を広めた人たち」が関係しました。新聞や週刊誌、テレビ等で不適切な報道が行なわれた結果です。
西明寺の普門院診療所で、ある患者が到着時に心肺停止状態でした。救命医療を施し、心臓は動いたのですが脳は回復せず、数日後に状態は悪化しました。私たちは救命不可能と家族に告げた後に提出されたリビングウイルとドナーカードに基づいて、延命治療の中止と死後の臓器提供を行ないました。
これを臓器移植のために不完全な脳死判定をして臓器を摘出したとして第三者から殺人罪で告発されたのです。この告発に対して、患者の遺族が告発者たちを虚偽告訴罪で告発しました。結局、約10年保留された後に臓器移植法が成立して不起訴処分となりました。
本人の自己決定権が尊重される社会の到来を祈願いたします。
●たなか・まさひろ/1946年、栃木県益子町の西明寺に生まれる。東京慈恵医科大学卒業後、国立がんセンターで研究所室長・病院内科医として勤務。1990年に西明寺境内に入院・緩和ケアも行なう普門院診療所を建設、内科医、僧侶として患者と向き合う。2014年10月に最も進んだステージのすい臓がんが発見され、余命数か月と自覚している。
※週刊ポスト2016年7月8日号