石油元売り大手・出光興産では、月岡隆社長ら経営陣が進める昭和シェル石油との合併計画に出光昭介・名誉会長ら創業家が反対し、合併に暗雲が漂っている。この場合、創業家にとって昭和シェル石油との合併は企業のルーツを揺るがす経営方針に映っているようだ。
創業者の出光佐三氏は1953年、当時、油田を国有化して英国と対立していたイランと密かに輸入協定を結び、「石油メジャーを出し抜いた」と世界をあっと驚かせた人物だ。以来、出光はイランと友好関係にある。
ところが、合併相手の昭和シェル石油の大株主はそのイランと断交(今年1月)したサウジアラビアの国営企業。合併は出光がサウジの国営企業傘下に入ることを意味するため、創業家はこの方針に反対しているとみられている。
合併計画は株主の3分の1以上が反対すれば否決される。出光家側は議決権の約34%を保有しているとされ、創業家は「拒否権」を握っている。出光石油社員がいう。
「社員は創業家のことを“店主の家”と呼んでいて、特別視しています。今回は経営陣が創業家の意向を蔑ろにしたことが混乱の原因になった」
※週刊ポスト2016年7月22・29日号