格安を売りにしたこのようなクリニックに勤務した経験を持つ歯科医らの情報によると、S社製のインプラント本体の仕入れ値は別表の通りで計約11万円。つまり一本手術すると、約28万円の利益が出る計算だ。
格安インプラントクリニックの特徴は、莫大な広告宣伝費をかけて患者を集める点である。月間1000万~2000万円以上を広告宣伝費にかけて患者の争奪戦となっているのだ。宣伝費のもとを取るには、インプラント手術の「薄利多売」状態になり、必然的に治療の質よりも量(手術件数)が優先される。
当然、トラブルにつながりやすくなる。インプラント治療で起きたトラブルについては、これまで本誌で詳述してきた。
問題が深刻化しているにもかかわらず、インプラントは自費診療であるとして、厚労省の対応は極めて消極的なままだ。筆者は格安インプラントクリニックの歯科医に、手術を受けたら、どれくらいもつのか、聞いてみた。
「10年生存率がS社だと99(%)超えます、余裕で。絶対ってことないですけど、おそらく一生大丈夫です」
抜歯とインプラント治療だけを勧めた2人の歯科医は一度も奥歯2本に触らなかった。
※週刊ポスト2016年7月22・29日号