中国では東南アジア諸国と係争中の南シナ海の領海問題で、実効支配を強めるため、「南シナ海をモルディブのようなリゾート地にする」や、「クルーズ船を増設して、観光に力を入れる」などの政策を強化している。
これはオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が中国の主張を全面的に否定する判決を下したことに中国政府が強い危機感を抱いているためとみられる。
しかし、南シナ海は大海原ばかりでまともな観光資源もなく、魅力に乏しいのに加えて、「いまでも観光客は当局から強制されている中国人が多いが、今後はだれも観光に行きたがらないのでは?」との声も漏れ聞こえてくる。
中国の英字紙「チャイナ・デーリー」によると、南シナ海上の海南省政府の幹部は最近、「南シナ海の(インド洋の)モルディブのような観光地にする」と表明したという。
具体的には水上飛行機による遊覧、釣りやダイビング、ロマンチックな結婚式といったものだ。地元自治体である海南省三沙市の肖傑市長は「観光が本格化した過去3年で約3万人の観光客が訪れた」と説明したうえで、「これからも島や岩礁の開発を進める」と語った。
また、海南省政府は2020年までに、現在、南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島へ就航している定期クルーズ船を新たに8隻建造して、就航させる計画を立案しているという。
とはいえ、いまでもクルーズ観光は3泊4日程度の日程だが、島嶼内にはまともなホテルも観光施設もなく、乗客らは船内に宿泊しているのが現状。しかも、台風シーズンなどは船が沈没する危険性もあり、観光客の募集に困っている状況だ。それを「各省政府を通じて、格安料金で客を集めているのが実態」と香港メディアは報じている。
さらに、最悪の場合、各島嶼は軍事基地化しており、ベトナムやフィリピンなどの軍と中国軍との戦場に変わる可能性も捨てきれないことから、「今後、いくら観光施設を充実させたり、クルーズ船を増やしても、生命の危険を冒してまで、南シナ海のど真ん中にまで観光に来るような酔狂な中国人はいないだろう」と米国を拠点にする中国問題専門の華字ニュースサイト「博聞新聞網」も報じている。